運命的な出逢い

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運命的な出逢い

 今日はミリア亭のお休みの日。リーヤは中央区の人気のパン屋に向かっていた。前に食べたソーセージがプリップリの、ホットサンドが食べたくなったのだ。  みんながいる訓練所の前を通り抜けようとして足が止まる、いつもはいない亜人隊のフェンスの前に若い女性が二人いた。 (あの子達、誰を見ているの?)  私はそう思い彼女達の視線を追って驚く。  彼女達はナサ、私の旦那をみているようだ。 (ナサがカッコよくて、優しいからモテるとは思っていたけど、こうやって見ちゃうと……ううん、ナサのことは信頼しているもの)  でも気になってしまい、チラチラ見ていた。 「リーヤ、来たのか?」  訓練が終わったのか、ナサが私に気付いてフェンス前まで来てくれた。 (今日も私の旦那様は素敵だわ!) 「……その格好はどっか行くのか?」 「うん。中央区のパン屋にホットドッグを、買いに行ってくるわ」 「中央区? 俺行けねぇ。リーヤ、訓練がいま終わったから、一緒にリキのパン屋に行こうぜ」  ナサの訓練が終わった!  一緒にナサと過ごせる。 「そうする。じゃ、宿舎の出口で待っているわ」 「おう、サッと汗を流してくるな!」  と、ナサは宿舎に入っていった。……ナサとわたしの会話中、二人の女性はわたし達をジッとみていた。 「あ、あの」  二人のうちの、おさげの女の子が話しかけてきた。 「はい、なんですか?」 「あなたは亜人隊の方達と仲がいいの?」 「はい、今話していた、ナサの妻です」 「え、妻? ……あなたはあの獣人の方と、ご結婚されているの?」  女性二人は驚いて様子。おさげの女の子は何か話そうとして、真っ赤になり、 「私、好きな人がいるんです」  と、言った。  話を聞くとこの子は東区に住む商家の子で、大のパン好き。噂で北区の鬼人のパン屋が美味しいと聞き向かい、パン屋で働く若い鬼人に一目惚れをしたと言った。  もう一人の子はこの子の付き添いで、亜人隊の人に聞けばわかるかと思って、声をかけようとしていたらしい、 (え、若い鬼人って言ったら……リキさんの息子、アオさんの事かな?)  ナサに騎士学園を卒業して、来年になったら亜人隊に入隊するって言っていたわ。 「リーヤ、入り口にいないから焦ったぞ」 「ごめん、この子達に話を聞いていたの」  汗を流して着替えたナサが寄ってくる、彼女達は体の大きなナサに、ビクッと体を揺らした。ナサは気にせずわたしの隣に来て、おさげの子を見た途端に笑った。 「ナサ、失礼よ」 「ごめん、ごめん、ちょっと思い出して。……シッシシ、少し前にリキのパン屋に行ったら、店を手伝っていたアオに会ってさ。アオがオレに可愛いおさげの子がパン屋に来たって言ったあと『どうしたら、その子と仲良くなれる?』って聞いてきたんだ……あれはぜったいに一目惚れだな」  ナサの話におさげの子は真っ赤っかに頬を染めた。  隣の子も、その子の肩を叩いて喜んでいる。 (運命の出逢い? すでに、二人は両思いだわ) 「と、いう話だから、怖がらず、北区のパン屋に行ってやってくれ」 「は、はい、また行きます。ありがとう!」 「ああ、気を付けて帰れよ」  二人と手を振って別れた。  ナサと並んでリキさんのパン屋に向かう途中、わたしは鼻息荒く『運命の出逢い!』とナサに言うと。 「それは、オレ達もだろ」 「え?」 「生まれも、育った国も違うオレ達がこのガレーンで出会ったんだ、運命的な出逢いだろ?」 「ほんとだわ! ナサとわたしは『運命的な出逢い!』ウフフ、そうなんだ、わたし幸せ」 「オレも、幸せだ」  ピタッと肩をくっつけて、大好きなナサの手を握り、わたしたちは仲良く、リキさんのパン屋に向かったのだった。
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