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ミリアの話
四、五年前。ガレーン国は人が住む国であった。北、南、西、東と四つある門はガレーン騎士団が交代で守っていた。
この北区にミリア(三十歳)という女性が、婚約者と住んでいた。彼らはこの北区で定食屋を開こうと日々お金を貯めていたーーさして、五年の月日がたちようやく中古だけど店を手に入れたのだ。
それは真夏の暑い日だった。
二人は定食屋の名前は"美味しい亭"とつけた。
「素敵な店ね」
「ボクたちの店だ!」
念願の定食屋の開店を三日前に迎えて、ガレーン国の人達に来てもらおうとチラシを配り、煮込み料理の仕込みをしたりと、開店まで二人は忙しく働いていた。
しかし、そんな二人ーーいや、北区に住む多くの住民にそれは起こった。
深夜十二時を過ぎた頃"ドゴーーン!!!"と、北門で大きな破壊音がした。なんと北の施設、ダンジョンからそれまで、度々あったモンスターが襲ってきたのだ。
いつもは小物モンスターばかりで、騎士団に任せておけば退治してくれる、と住民達は安心しきっていた。
それが今回ばかりは違っていた、モンスターは中型で白兎が北の門を襲ったのだ。北門を守る騎士達は剣を構えたが、白兎の体当たりに耐えられず負傷者は増えた。
強い騎士達だが中型のモンスターと戦うのは初めて、戦い方がわからず苦戦をしいられた。
「このままでは市民が怪我をする!」
北区に住む住民の避難をさせた後。
ガレーン国王陛下がはどうやったのかわからないが、ガレーン国を覆う結界を張り、白兎モンスターを追い払うことに成功した。
このことがあった翌日から、北区に住む人々は恐怖に怯えて他の区に移動する者、国を離れる者いた。一夜明けて、ほとんどの人が北区からいなくなった。
北区で念願の定食屋を開こうとしていた、ミリアと婚約者。人々が北区からいなくなってしまい、店を開けてもほとんど客はこない。
『大丈夫、また人が戻ってくる!』とミリアが励ましても、婚約者はもうダメだと酒を飲み歩き、酒に溺れる日々を送りはじめた。
さらに、追い打ちをかけるように国王陛下は近隣の亜人の国から強き戦士、亜人達を北区に向かい入れると宣言した。あたらしく亜人制度ができて、それにクリアした亜人達が移り住んできた。
[本当は戦争に負けたユーシリン国に命令をだして、制度にクリアできた、亜人達を強制的に住まわせていた]
北区に残っていた人々は見た目が違う亜人達に怯えた。ミリアの婚約者も初めて見る亜人に恐怖をいだき、ミリアを一人残して、いつの間にか作った愛人と、店、ミリアを捨てて消えてしまった。
突如、一人残されたミリア。
私はどうする?
婚約者に裏切られて傷付いたミリアだが、
定食屋はミリアとっても、念願の夢だった。
北門を守る亜人隊が出来るまで、亜人自警団が頑張り、人々は友を失い、大切な人を失い、泣きながら生きていることを亜人達の話しで知る。
亜人達も私たちと変わらない、
何か私に何かできることは?
ミリアは考えたて定食屋を開こうと決め、東区に住むおばさんに力を借りて、名前を"美味しい亭"から自分の名前が入った"ミリア亭"に変えた。
『誰でもおいで! 美味しいものをたらふく食べさせるよ!』と亜人、人、誰構わず料理を安く振る舞った。
ミリアはこの北区に住む、みんなに美味しいものを食べてもらい。笑顔でいて欲しいと願い、いまもこの土地で料理を作り続けているのだ。
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