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クラスのあちこちで、ガタガタッ。よしもとか! とつっこみつつ大丈夫大丈夫、落ち着いて。ここ女子校。学校の隅から隅まで女子しかいないから。けれど、もうそろそろ苦情が来そうだなあ。
「って、違ええ。そっちの冒険じゃなくって、あっちの冒険。勇者とか魔王とかピーチ姫とか」
「筈見さんたち、静かにしてよ」
ほら怒られたあ。
「あっ、ごめ~ん」
私は仕方なく前を向いた。みんなさあ勉強してんだよ。勉強の邪魔はしちゃいかんよ。
意味なく開いていた教科書を、私は両手で持って立て直した。そして、少しの間をおいて言った。
「あるよ。ツテがなくても異世界に行ける方法」
今度は教室のあちこちでガタガタッと響かないのを確認すると、赤いブラジャーより破壊力なかったわと、ふっと吹き出した。
✳︎✳︎✳︎
「で? どうやんの?」
学校帰り、二人並んで帰る、いつもの光景。
私が笑うと、沙里は少し怒ったような顔で横から言葉を投げて寄越す。
「うあ、もしかしてフェイクだった? あたしやられた系?」
「いやいやフェイクじゃないよ。異世界で冒険でっしょ」
「マジできんの?」
「できるよ」
「どうやんのよ? ねえ、本当にできんの? ねえねえ」
その言い方。信用してないな。少しだけイラっとする。そうなるともう、私の反撃はいつも決まった方法で、だ。勉強の苦手な沙里にわざと、難しく言う。
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