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「To see a world in a grain of sand,And a heaven in a wild flower……」
「ちょ待て待て待てぃ! 急になんなん?」
「何って、英語の授業でやったじゃん。ウィリアム ブレイクの詩」
「ムリムリそんなの覚えてねぇ~」
私はちょっと面倒くさくなったけれど構わず、諳んじた。
「一粒の砂に一つの世界を見て、一輪の野の花に一つの天国を見る。手のひらに無限を乗せ、ひとときのうちに永遠を感じる、だよ」
「は? どゆ意味?」
沙里の、ぽかん顔。
「どういう意味って、日本語だっつーの」
「あ? じゃあ古文か! 古文だな! だって、なんて言ったか全然分かんねぇもん」
私は笑いながら続けた。
「だからあ。よーくよーく物事を注意深く見るんだよってことなの。そうすると、一粒の砂の中に世界が見えてくんの。野の花の中に天国が見えてくんの。あんた次第で、永遠を感じることができるってこと」
「え、何、その深イイっぽいの。篠田(しのだ)のやつ、そんなこと言ってたっけえ?」
「いや、これはわたくし個人の解釈になりけりいとおかし」
沙里は、ぶっと吹き出すと、満面の笑顔を寄越してきた。
「沙保里い、あんた、マジ凄ええぇぇ。外国人か。天才か。乙女だわ。天才だわ~」
いやあ、あんたの壊滅的な日本語の方が!
そう心の中で呆れながらも、私は人差し指で鼻の頭を掻いた。
「ででで? そんでまあ、それは分かったとして。で?」
私は前を向いて、姿勢を正した。そして。
「じゃあ、今からやってみます‼︎」
「おうっ‼︎」
「ついてきてっっ」
そして、私と沙里は並んで歩き出した。
✳︎✳︎✳︎
「ストォップ!!」
私が声を上げると、沙里が一歩前に出した足を引っ込めて戻り、私の肩に肩をドンッ。立ち止まった。
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