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「……ん?」
そこは、私がいつも学校から帰る道の途中、住宅街の一角にあるぽかりと空いた空き地だ。
いつの頃に立てられたか分からない『売地』の看板。そのサビサビな看板と並べられて立っているのは『良い子はここで遊ばない』。
「何、ここから異世界に行くの?」
「そーそー」
「良い子は遊んじゃだめって」
「良い子だと思ってるとしたらウケる」
私は訝しむ沙里を置いて、鎖を跨いで空き地へと足を踏み入れた。空き地の真ん中辺りまで進むと、そこに広がるのは緑の絨毯。そして真っ白なシロツメクサがぎっしりと咲いている。
「ここ。座って」
「……沙保里ぃ、ここすごいね」
沙里が感心したように辺りを見回しながら、よっこいしょとその場に座った。
「でしょー。あんたはここから四つ葉のクローバーを探して」
「え、この中から?」
「そうそう」
私はシロツメクサの花の茎を千切った。何本かを千切ったところで沙里を見る。茶色に染めた肩まであるストレートの髪。四つ葉を探して手を伸ばす度に、さらさらと揺れる。
私たち名前が同じだあ! そう言って大笑いしていた高校入学の頃を思い出す。黒髪でちっとも面白くもない、なんとも笑わない私を、いつも笑わせてくれるおバカな女子。
名前だって、私には「保」という漢字が入っていて、一緒って訳じゃない。そう抗議すると、「どうして沙保里って、さおりなの?」と言って、意味不明。
よくよく聞いてみると、「保」を「お」と読むのが不思議だったようだ。そのことが解明された時、私たちはもう友達になっていた。
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