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私はシロツメクサの花を編み、沙里は四つ葉を一生懸命探している。
花冠の二つ目が出来た頃、沙里はようやく四つ葉のクローバーを1枚、探し当てた。
「あったあ‼︎ これでしょ、これ」
「そうそう、よくやった!」
私が笑うと、沙里が満足げに笑った。
✳︎✳︎✳︎
「え? なんか恥ずくない? え、なんなんこれ、罰ゲーム?」
お互いに花冠を被ったまま、路地を歩く。
「異世界に行くための事前準備」
「はあ⁉︎」
沙里のシロツメクサの花冠から、沙里が見つけた四つ葉のクローバーがゆらゆら揺れている。私はこの四つ葉が本当に沙里に幸せを呼んでくれないかなと、そう思わずにはいられなかった。
沙里に幸運が訪れますように。善良な人だけが、寄ってきますように。
「沙保里~、聞いてよ。また加藤がさあ、」
男運のとことん悪い沙里が、またもや机に突っ伏して嘆いている。
あんたは男を見る目が無いって、いつも言っているでしょ。軽くてバカで女で遊ぶチャラい男しか、目に入らないし、寄せてこないんだから。
何度も後悔するのに、また同じ種類の男を選ぶんだな。
私は沙里と肩を並べて、路地を曲がって人通りのある少し大きな通りに出た。すれ違う人が私たちを見て、笑顔でと言いたいところだが、失笑で通り過ぎる。
「恥ずいわ」
「異世界、行きたいんでしょ」
「……地獄すぎる」
私は苦笑な沙里を確認して満足すると、そのまま歩き続けた。
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