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「んー、だってさあ、こんな安い買い物でも許されるんだって思って」
「そりゃあ駄菓子だし。良いに決まってるよ」
私は口の中で次第に溶けていく甘い甘い至福を感じながら、ちょっとぼんやり。
少し日にちは遡るが、学校の教室での苦い出来事を思い出していた。
「益田(ますだ)さんさあ、あんな筈見さんとよく一緒に居られるね」
沙里がノート当番で居ないのを見計らって、私はクラスの女子三人に机を囲まれていた。
(あんな、って……)
私は半ば呆れながら、訊いた。
「どういう意味?」
「なんかさあ、性格だって正反対なのに、相性合うのかなって。益田さんが無理して合わせてるの、皆んな知ってるんだ。こっちに入ってもいいよ」
「別に無理して合わせてるわけじゃないけど」
クラスの皆んなは知らないだけ。沙里が結構、ちゃんとしてるってこと。外見がああだから、バカでチャラい男子しか寄ってこないだけで。
一日中働き詰めのシングルの母親の代わりに晩ご飯作ってるし、この前買った赤いブラジャーだって、ちゃんとワゴンの中から選んでるし、しかもその中の最安値だし。
「そうなんだ、じゃあもう誘わないけど……」
引き込むことを諦めて、けれどそれでも何かを言いたげに、お互いの顔を窺っている。誰が言い出すのか、待っているようだ。
「何?」
私は少しイラついて訊いた。
「今度の修学旅行なんだけど、私たち振り回されるの嫌だから、益田さんが筈見さん何とかしてよ」
そこでようやく、ああ、こいつら同じグループだったわと思い至る。
「いいよ、グループ分かれても。最後にどっかで落ち合えば良いんでしょ」
「うん、じゃあ、お願い」
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