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申し訳なさそうになのか、後ろめたそうになのか、やっと離れていった。私は心で、バカじゃないのと貶しながら、読んでいた本の続きに目を落とした。
本当は涙が出るのかと思った。けれど、字を一生懸命目で追っていたら、それはいつの間にか引っ込んでいった。
「駄菓子って、安くて助かるなあ」
その声で現実へと引き戻される。隣を見ると、片側のほっぺに丸みを作って、沙里がにかっと笑っていた。
あまりお小遣いを貰えない沙里のその言葉に、じわりとくる。
「でしょ」
そのやり取りだけで、私は満足だった。
✳︎✳︎✳︎
「ねえ、今度はここ?」
「うんっ‼︎ そうっ‼︎ ひゃっほう‼︎」
私が全身に風を受けて空へと近づくと、鎖がギギっと音がする。私が空から遠ざかると、やっぱりギギっと音がした。足を器用に操って、小さな公園のブランコを、目一杯に漕いだ。最初は躊躇していた沙里が、横でようやくブランコを漕ぎ出したのを見て、私は笑った。
「きっもちいー‼︎」
私は立って、沙里は座って、そしてお互いにクロスしながら、行ったり来たりを繰り返す。楽しくなってきたのか、沙里がブランコを漕ぎながら、あははと大口をあけて笑い出した。
私も笑いながら空を仰ぐ。
空はいつもそこにあるように、青く大きく広がって。白い雲が横へと流れていく。
頭を大きく上へと向けて、ブランコをぶわっと漕いだ。その瞬間、頭からシロツメクサの花冠が、スローモーションのように落ちていった。
「あっ‼︎」
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