プロローグ

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 すると、スッキリとした鼻筋にくっきりとした二重の目を持つ、なかなか美しい顔が露わになる。だが、怪盗Z的にはこの顔はあっても困るものらしく、眉間に皺を寄せた。 「どうしてここまで親父と顔が似ているかなあ……。お袋に似ていたのなら、少なくとも弟子には素顔を見せることができたのに。」  実を言うと、彼は所謂隠し子であったため、父親との繋がりはできる限り隠す必要があったのだ。よって、否応なしにも親子関係が証明されるような容貌は邪魔でしかない。  だがこれだけならば、ここまで慎重に正体を伏せる必要はなかったであろう。どこからか正体がバレても、数少ない人々との間で修羅場が起こるだけである。  しかし、それは父親の知名度がそう高くない場合の話である。残念ながら、怪盗Zの父親の知名度は非常に高く、少なくとも国民全員が知っている人物だった。  というのも彼の実父は、ベルー公国の君主たるレオナルド2世なのだから。
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