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だがそんな中、カリンは懐妊して男の子を産んだ。そして、これまでは戦勝国出身の彼女を快く思っていなかった国民達も、世継ぎ誕生の報せを受けて態度を軟化させ、元々強固な彼女の地位はさらに盤石なものになった。
しかしその裏で、レオナルド2世は大きな苦悩を味わっていた。この赤ん坊が自身の子だと仮定すると、どう考えても計算が合わないのである。つまり、産まれてきた子は実子ではなく、カリンとその不倫相手の子供だったのだ。
本来ならば、証拠を叩きつけて妻の不貞行為を糾弾し、子共々追放すべき案件であるし、彼も本心ではそうしたくてたまらなかった。だが、ベルー公国の国力はまだまだ弱く、マーシャ王国に喧嘩を売って勝てる見込みは限りなく低かった。
よって彼は、自分の子でもない幼子が自身の世継ぎとしてスクスク成長する様子を、指を咥えて見ていることしか出来なかったのである。
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