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家庭がそんな状況なので、レオナルド2世はいつしか頻繁に地方視察を入れ、宮殿に最低限しか寄りつかなくなった。
(妻は性悪女、息子とされている男は不義の子、か……。この世で一番不幸、とまでは言わないが、相当酷い人生だな。)
その日も視察のため、首都から遠く離れた地方に来ていた彼は、自分の哀れな境遇を自嘲する。だがここの領主の屋敷に到着した時、そんな彼に一縷の光が差し込む。
「君主様、ようこそおいでくださいました。ダンベル男爵家の当主、ロナンでございます。」
「妹のエレナでございます。」
「あ、ああ、ありがとう。」
農民と間違えそうな程、質素な服を着た兄妹が出迎えてくれたのだが、レオナルド2世の視線はエレナの方に釘付けになっていた。気のキツさをそのまま表わしたような容姿のカリンとは正反対の、愛嬌のある垂れ目とほんわかとした微笑みに、一瞬で心を奪われたのだ。
これが、レオナルド2世の初恋であった。
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