第一話 遺体のない葬儀

4/15
38人が本棚に入れています
本棚に追加
/238ページ
「いい加減、前向きなよ、レオ」 「うるせえ!お前に何が分かる?ほっとけよ。俺にはアイツ以外、要らねえよ。アーサが死んだはずがないんだ!」 少し前から徐々に強さを増していく雪の中で    俺は婚約者だった立花亜里沙の葬儀に、     連れの3人とともに参列していた。 その空間にあったのはどこまでも虚しい無限の闇でしかなかった。 傘をよけて肩に積もる雪を       (はら)うこともせず…      ただそう俺は思っていた。  血に染まった(よろい)を着たおどろおどろしい、君を連れ去る悪魔を乗せた黒い車をただ見つめて。 彼女が死んだという実感のない    非現実世界に唯々(ただただ)苛立ちを覚えていた。
/238ページ

最初のコメントを投稿しよう!