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手には、あったかいポップコーンを持って。
冷たいジュースも。
初めての映画館で、蓮はドキドキしていた。
クッションの利いた座席に掛けて。
隣には、巴さんがいてくれて。
「僕、とっても嬉しいです」
「映画の内容に、満足してくれればいいが」
蓮が選んだ映画は、邦画のヒューマンドラマだった。
「アクションとか、ラブコメとか選べばよかったのに」
退屈かもしれないぞ、と巴は笑顔だ。
「僕、大きな音や激しい展開は、苦手なんです」
興行成績も人気もそこそこの作品だが、光る名作と評論家は語っていた。
(まず、間違いはないだろうが)
巴は蓮のことを気にかけながら、スクリーンに目をやった。
難病を抱えて心を閉ざした少年を、周囲の人々が温かく見守る。
そして彼は、その思いに応えて心を開き、見事病気も克服する。
そんな、心温まるストーリーだった。
(奇抜さは無いが、ていねいに創ってあるな)
巴は、涙を流す蓮に、そっとハンカチを渡した。
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