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第八章 共演者
「蓮、ピーマンが残ってるぞ」
「僕、ピーマンはちょっと……」
「私の作った料理でも?」
食べさせてあげるから。
「はい。あーんして」
「あ~ん」
巴と蓮は、こんな感じで甘い生活を送っていた。
巴にとっては、蓮を育むことのできる喜びでいっぱいだ。
蓮は、愛する人に寄り添ってもらえる幸せに満ちていた。
ただ、映画撮影がいよいよクランクインしてしまうと、蓮の生活は不規則になった。
昼夜を問わない、撮影。
遠いところへの、ロケ。
さすがの巴も、自分の勤務がある以上、蓮にくっついて廻るわけにはいかない。
『巴さん』
「蓮、何だか久しぶりだな。今、どこにいるんだ?」
『四国です』
『地方ロケ、か。頑張ってるんだなぁ』
電話で、そんな会話を交わす。
蓮が決まって言う言葉は。
『巴さん、会いたいです』
オフの日は、くたくたでほとんど眠っている、蓮。
巴は、心身が悲鳴を上げ始めている彼に、何かしてあげたかった。
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