黄金が眠る島

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「なんだ?」 いつの間にか背後に迫っていた敵2人にマボロは後ろからがっちりと腕をとられて押さえられた。 だがこの程度の拘束、彼にはまったくピンチにはならない。 力任せに解こうとすると、腰あたりにずしりとした重さがぶら下がった。 「てめぇ……」 「覚悟しろ金髪!俺たちの舞台に招待してやる!!」 マボロにタックルし、がっちりと組みあったバレイアは怪力を活かしてそのまま前進を続けた。 拘束されて思うように動けないマボロは敵の意のままに後ろに下がらされてしまう。 バレイアはなおも突進をやめず、船の木材を破壊してマボロと一緒に空を飛んだ。 太陽に照らされた海面がピカピカと光っている。 「まずい……」 マボロがその言葉を口ずさんだときにはもう遅かった。 今の状況を理解してマボロは大きく息を吸った。 バレイアに組まれたまま、マボロは海の中に落ちる。 水しぶきが高くあがる。 体の自由が制限される海中の中へ、マボロは引きずりこまれたのだ。 はっきりと笑うバレイアは、右手に持ったカトラスをマボロの腹に刺した。 清らかな青い海が紅い血液に染まる。 本来のホームグラウンドに沈んだバレイアたちの動きは素早い。 まるで地上にいるときのようにスムーズに動いている。 機動力では勝てないと瞬時に判断したマボロは、万力のようにゆっくりと両手を動かした。 馬鹿力にものをいわせて無理やり敵2人の拘束を解く。 そのまま彼らの首をがっしりと掴み、指に力を入れて亜人2人の首を折った。 そしてバレイアの胸を蹴り、手足を優雅にばたつかせて距離を取る。 マボロとバレイアは睨みあい、双方手に握った剣を握りしめる。 海の中では言葉はない。 バレイアは急発進し、素早い立て振りの剣を繰り出した。 苦戦をする番がマボロに回ってくる。 マボロはやや緩慢になってしまった動きで敵の攻撃を防ぐ。 バレイアの攻撃は容赦ない。 だが有利になっていると感じたとき人は気を緩める。 大振りになった敵の攻撃を見逃さず、マボロは剣を避けてバレイアの右手を左手で掴んだ。 相手のバランスを崩そうとマボロは握った手に力を入れるが、膂力ではバレイアのほうが上だ。 バレイアは嫌らしく笑い、接近戦を試みた。 肌がこすりあうほど近づき、マボロを抱きしめる。 マボロはその意図が分からなかった。 するとバレイアはいきなり体を上下反転させ、思い切り水を両足で蹴った。 バケモノ染みた脚力による加速で、マボロとバレイアは抱き合ったまま海底に向かって急降下する。 船からどんどん離れていく。 しかしマボロに焦りはない。 冷静にバレイアの首に腕を回し、強引に折ろうとした。 そこでまたバレイアは笑う。 流石に手下のように簡単にはいかないのだ。 ペーシェ族の中でもとりわけ屈強な肉体を持つバレイアを彼はまだ倒すことができない。 バレイアは伊達にキャプテンを名乗っているわけでないのだ。 マボロがモタモタしているうちにどんどん体は海の底に沈んでいく。 マボロは鼻で笑う。 笑いが泡となり、上昇していく。 彼はそっとバレイアの股間に手を伸ばした。 睾丸に触れ、鷲掴みしようとするとバレイアはさっとマボロの体を押して拘束を解く。
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