23人が本棚に入れています
本棚に追加
/242ページ
魔女と不死身の剣士
薄暗い森の中を1人の魔女が歩いていた。
孤独にはもう慣れている、何十年もこの陰気な場所に住居を構えている。
食料を調達し、今はその帰りだ。
「はて奇妙だな……ボロ雑巾が道に落ちてる……地面を拭いても綺麗にはならんというのに」
魔女はテクテクと大きなボロ雑巾に近づいた。
赤い血が染み出し、安物の白い服は汚れて茶色くなっている。
抜き身の折れた剣がそばに落ち、傷だらけの男が倒れていた。
この森には滅多に人間は訪れない。
訪れたとしてもよほどの阿呆か、学者だけだ。
人類の毒にも薬にもなる動植物で溢れかえっているからである。
「ふむ……利口そうな顔はしていないな」
魔女はかがみこみ、男の髪を持ち上げた。
息をしておらず、目を瞑ったままの男の顔を観察する。
「興味本位で足を踏み入れたか、それともここがどんな場所か知らずに迷い込んだか……どっちにしろ無知というものは罪深い」
しばらくじっと男の顔を見つめた魔女は、少しだけ哀れに思い埋葬してやろうと思った。
どうせ暇だし、このまま魔獣の餌にするのも忍びない……そう思ったのだ。
「死んでから運が巡ってきたみたいだな、このご時世五体満足で土の中で眠れるなんて幸運だぞ……特にこの森の中ではね」
「そうでもないさ……」
「うわっ!」
死人が喋ったので魔女は勢いよく持った頭を地面に叩きつける。
「ぐげっ」という小さな悲鳴と生なましい打撲音が響く。
「痛いじゃないか……」
「なんだ生きてるのか!早く言え!」
「気絶してたんだよ……」
「……まあいいが……それより」
魔女はまじまじと男の体を見下ろした。
男に近づいたことにより、その怪我の酷さが目に映る。
胸と腹部には何か所も刺し傷があり背中まで穴が開いている。
腕や足も同様に傷があったが、特に酷いのが首と頭部だった。
ズタズタに引き裂かれて、なぜ今も頭と首が繋がっているのか分からない。
それに額にも切り傷や刺し傷、銃創まである。
なぜ脳みそが破壊されていないのだろうかと、魔女は素直に思った。
最初のコメントを投稿しよう!