黄金が眠る島

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「ええクソ!!」 彼がいるこの場所は敵の船の中だ。 当然船に残ったバレイアの仲間たちがいる。 彼らはみな一様に恐ろしい顔で、侵入者のマボロを見下ろしていた。 「悪いがあんたらの相手をしてる時間はない。ご主人のとこに戻るぜ」 マボロの意思など無視して、敵は襲ってきた。 舌打ちをした彼はまず、武器を確保する。 力任せに亜人の手からカトラスを奪い取り、その剣で敵の体を真っ二つにした。 舞踏のような軽やかな動きで、マボロは敵の体を裂き、血を噴出させる。 あまりの強さに怯んだ敵の動きを見逃さず、マボロは踵を返した。 船室にひっかかった碇には鎖がついている。 マボロはその鎖の上に足を乗せて全速力で駆けだした。 この船とニアが乗る船を結びつける鎖を猛ダッシュで駆けていると、いきなり彼の体の軸がぶれた。 バレイアが碇を手元に戻そうと引っ張り、碇はすごい速さで対面の船に戻っていく。 「くそう!!」 マボロは数歩海面を走り、海の中に飛び込んだ。 彼らに負けないほど優雅に力強く泳ぎ、海中を進む。 数秒でニアが待つ船に辿りついたマボロは船体をよじのぼり、甲板に帰還した。 「ニア様!!」 「マボロ!うわっ!」 バレイアはニアに近づき、剣を横に払った。 咄嗟の反射でニアはナイフで彼の剣を防ぐ。 しかし衝撃までは防ぎきれない。 ニアは甲板を転がり、苦しそうに呻く。 「てめぇ!!この鯨頭野郎がぁぁ!!」 マボロは激怒した。 カトラスを強く握りしめ、敵のボスであるバレイアに斬りかかる。 バレイアは笑いながらその勝負を受けた。 マボロは力任せに何度も剣を相手にぶつける。 敵は余裕綽々といった様子で剣を受け止めた。 「ふん。しょせんは人間だ、俺には勝てん」 そう余裕ぶっていたバレイアだが、すぐに認識を改めることになる。 自分の体に子供のお絵描きのような不規則な軌道で刻まれた剣筋に反応できなかったからだ。 体から黒っぽい血が噴き出て、甲板を汚す。 「なに!?」 「ニア様を傷つけやがったな……刺身で済むと思うなよ」 マボロの変幻自在な剣技が冴えわたった。 なんとか防戦一方で対処するバレイアだが、全ての刃は防ぎきれない。 確かな攻撃力を持った彼の刃が、デカい図体を斬りつけていく。 「マボロ!!」 「あ?」 マボロはニアの声を聞き、彼女が手に持っている物を持ってバレイアから離れた。 ニアが全力投球したコルクつきの瓶が敵の体に当たって、激しく燃え上がる。 さすがのバレイアもこの炎には参った。 体中が燃えて、バレイアは大きな叫び声を上げた。 敵のボスがもだえ苦しんでいる間に、マボロは素早く行動する。 船に乗っている雑魚たちを手当たり次第に処理して、仲間の安全を確保した。
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