魔女と不死身の剣士

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魔女と不死身の剣士

薄暗い森の中を1人の魔女が歩いていた。 孤独にはもう慣れている、何十年もこの陰気な場所に住居を構えている。 食料を調達し、今はその帰りだ。 「はて奇妙だな……ボロ雑巾が道に落ちてる……地面を拭いても綺麗にはならんというのに」 魔女はテクテクと大きなボロ雑巾に近づいた。 赤い血が染み出し、安物の白い服は汚れて茶色くなっている。 抜き身の折れた剣がそばに落ち、傷だらけの男が倒れていた。 この森には滅多に人間は訪れない。 訪れたとしてもよほどの阿呆か、学者だけだ。 人類の毒にも薬にもなる動植物で溢れかえっているからである。 「ふむ……利口そうな顔はしていないな」 魔女はかがみこみ、男の髪を持ち上げた。 息をしておらず、目を瞑ったままの男の顔を観察する。 「興味本位で足を踏み入れたか、それともここがどんな場所か知らずに迷い込んだか……どっちにしろ無知というものは罪深い」 しばらくじっと男の顔を見つめた魔女は、少しだけ哀れに思い埋葬してやろうと思った。 どうせ暇だし、このまま魔獣の餌にするのも忍びない……そう思ったのだ。 「死んでから運が巡ってきたみたいだな、このご時世五体満足で土の中で眠れるなんて幸運だぞ……特にこの森の中ではね」 「そうでもないさ……」 「うわっ!」 死人が喋ったので魔女は勢いよく持った頭を地面に叩きつける。 「ぐげっ」という小さな悲鳴と生なましい打撲音が響く。 「痛いじゃないか……」 「なんだ生きてるのか!早く言え!」 「気絶してたんだよ……」 「……まあいいが……それより」 魔女はまじまじと男の体を見下ろした。 男に近づいたことにより、その怪我の酷さが目に映る。 胸と腹部には何か所も刺し傷があり背中まで穴が開いている。 腕や足も同様に傷があったが、特に酷いのが首と頭部だった。 ズタズタに引き裂かれて、なぜ今も頭と首が繋がっているのか分からない。 それに額にも切り傷や刺し傷、銃創まである。 なぜ脳みそが破壊されていないのだろうかと、魔女は素直に思った。
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