1人が本棚に入れています
本棚に追加
「そういえばミカ、動画配信やってみたいとか言ってたじゃん! どんなの作るの?」
「あ、う、うん」
意気込んでいたのに、香織に話題を振られた途端、考えていたことがすべて吹き飛んでしまった。
それでも苛立ちは続いている。バイトで鍛えた愛想笑いを繰り出して、なんとかその場をしのぐ。
「なになに! ちゃんミカ動画作んの? スッゲ~! オレも出ていい?」
「あ、あーっと……」
「実香はね、ドーナッツの食べ比べ動画を……あっ、これ、言っちゃっていいのかな?」
「優助くんまぬけだな~! ひゃひゃ!」
男が両手をたたいて天を仰ぐ。PCの電源ボタンに指を伸ばしてしまった。
「優助君はなんていうか……癒やし系なんだよ! そう!」
「香織~! オレのいいとこも言ってくれよぉ!」
「え~、どうしよっかなぁ?」
会話はつつがなく進んで、香織と彼氏が盛り上がる。優助は彼氏に軽く馬鹿にされても気にせず相槌を打つ。
言い返すタイミングを逃した私は机のあしを軽く蹴りながら、得意の笑顔を浮かべるだけだった。
最初のコメントを投稿しよう!