思わぬ亀裂

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「そういえばミカ、動画配信やってみたいとか言ってたじゃん! どんなの作るの?」 「あ、う、うん」  意気込んでいたのに、香織に話題を振られた途端、考えていたことがすべて吹き飛んでしまった。  それでも苛立ちは続いている。バイトで鍛えた愛想笑いを繰り出して、なんとかその場をしのぐ。 「なになに! ちゃんミカ動画作んの? スッゲ~! オレも出ていい?」 「あ、あーっと……」 「実香はね、ドーナッツの食べ比べ動画を……あっ、これ、言っちゃっていいのかな?」 「優助くんまぬけだな~! ひゃひゃ!」  男が両手をたたいて天を仰ぐ。PCの電源ボタンに指を伸ばしてしまった。 「優助君はなんていうか……癒やし系なんだよ! そう!」 「香織(キャオリ)~! オレのいいとこも言ってくれよぉ!」 「え~、どうしよっかなぁ?」  会話はつつがなく進んで、香織と彼氏が盛り上がる。優助は彼氏に軽く馬鹿にされても気にせず相槌を打つ。  言い返すタイミングを逃した私は机のを軽く蹴りながら、得意の笑顔を浮かべるだけだった。
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