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急に視界が暗くなり、顔に圧を感じた。
「行くぞっ。」
左側後ろから甲斐くんの声がする。
顔に回された腕が甲斐くんのものだと分かったけれど、あれよあれよと言う間に視界をさえぎられたまま引きずられて店内へ連れて来られた。
靴を脱ぐところで、甲斐くんはようやく腕を離してくれたけれど何も言わずに座敷に上がっていってしまった。
唖然としながら乱れた髪を直していると、後ろから来た間宮さんが「寺坂さん、この後、飲み直さない?」と誘ってきた。
「すみません、明日朝早いので。」
「何かあるの?」
「弟が試合あるので、お弁当作らないとなんです。」
「弟さん?いくつ?」
「何コソコソしてんの?もしかして二次会の話?」
化粧室帰りだろう同期の吉田さんがポーチを持ち、私に後ろから抱きついてきた。
「あははっ、吉田さんはお酒強いんだね?」
間宮さんの問いかけに
「強くはないですけどー、好きですっ。」
と吉田さん。
ウオッ。声には出さないけど、首が絞まった。
(抜け駆けはゆるさん。)
吉田さんに耳元で言われ、コクコクと首を縦に振る。
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