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三次会へ向かう道中、我が家の事情を知る同期にかくまわれながら道をそれた私は、なんとか早足で駅まで向かい電車に乗った。
疲れた、ものすごく。
五感全てが悲鳴をあげているのが分かる。
あれから先輩につかまり、結局二次会にも参加させられてしまった。
ふらふらになりながら最寄りの改札を抜けると、
「奈々っ。」と声がした。
私の自転車にもうまたがった朔太郎がいる。
「おーっ。悪いねぇ。」
私はヨロヨロと近寄りその自転車の後ろにまたがると、朔太郎の腰に手を回した。
「朔太郎よ、出してくれっ。」
「へいへいっ。」
自転車がぐんっと動き出した。
朔太郎のTシャツからは同じ柔軟剤の匂いがして、ようやく気が緩む。
「朔太郎、働くって大変だぞ。親に感謝しろっ。」
「なんだよ、酔っぱらいオヤジか。」
「今を楽しめ朔太郎。青春を謳歌しろっ。」
「言われなくても充実した日々を送っております。」
「ならいーんだっ。おねーちゃんは、もう、寝るっ。」
「えっ?はっ?勘弁してくれよっ。」
動揺した朔太郎の、振り落とされそうな自転車の蛇行運転にこちらだけテンションが上がる。
「あはははっ。」
「ちょっ、ちゃんと捕まっててよ??」
「すみませんねぇ。」
可愛い私の愛する弟、朔太郎。
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