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今日はピーマンの肉詰め、豚カツ、きんぴらごぼう、ひじき煮入りの卵焼きにリンゴ。おにぎり5つ。私は手が小さくて、小さなおにぎりしか握れないから、数だけ多くなってしまう。
この小さなおにぎりを友達にからかわれる事があると言う。“幼稚園児か”って。
そんな朔太郎に「ごめんね。」と言うと「羨ましいだけだろ?俺はねーちゃんの弁当が食えたらそれだけで頑張れるからさ。」とサラッと言うから、胸を撫で下ろす。
朔太郎を朝見送る時、必ず不安になる。
どうか今日も無事に帰ってきますように、と願いをこめて「気をつけてね。いってらっしゃい。」と声をかけて願もかける。
朔太郎が元気でいてくれる。それだけで、私は幸せ。
早朝の一仕事を終えると、家中のシーツとカバーを洗う。
祖父は物静かで勤勉、朝から新聞をじっくりと縁側で読む。
父は夜勤もある勤務形態。休日に朝からゆっくり顔を合わせるなんてことは稀で。
家族4人分の家事と、町内会の清掃や行事へのお手伝い。日用品の買い出し。私は何かと土日も忙しかったりする。
飲み会明けの月曜日。
お昼休憩、倉庫、中2階。いつもの部屋の扉の前。
あははっと賑やかな笑い声がする。
戸を勢いよく開けると、パートさんが大笑いしている。
あの、パートさんが…。あの…だ。
そしてその横に間宮さんが座っているではないか。私のいつもの席に。
「あっ、おつかれっ、寺坂さん。」
「はぁ、おつかれさまです。」
「あ、この席?ごめんね、はいっ。」
間宮さんが立ち上がり、座っていたパイプ椅子を引いた。私に座れと?
「結構です。すみません、今日は外で食べます。」
私は大人気ないと思いながらも、部屋を出た。
気に食わない。
私の神聖なお昼休憩の場を荒らされた気分。
「ちょっと待って。」
後ろから間宮さんが着いてくる。
勘弁してくれ。
中学生じゃあるまいし。
私は無視して、階段を降りて倉庫裏の縁石に腰を下ろした。
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