藍白

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ランチ、皆んなは社食へ行くが私はお弁当なので、本館横に立つ倉庫の全体が見渡せる中2階の部屋で食べている。 ここは全く喋らない年配のパートさんと、ウロウロしていて何の仕事をしているのか分からないおじいちゃんがいるのみだ。 入社当初、倉庫の壁沿いにちんまり座って食べていたら、このおじいちゃん、丹下(たんげ)さんに手招きされてこの部屋に連れてこられた。 それ以来ここには私のお昼の居場所がある。2人とは全く話さないけれど。それがまた良いのだ。 人と話すのも一緒にいるのも好きだ。 でも、1人の時間は一日の中で多めに確保しておきたいところ。 今日はもうエアコンが付いているこの部屋でいつも通りお弁当を食べた後、パートさんが無言で差し出してくれた、顎が外れそうな固いサブレと格闘していた。噛めないサブレで売り出したらヒットしそうだけど。 「オッサン、氷くれっ。」 扉を勢いよく開けるなり大きな声で言い放ったこの男は甲斐(かい)くん。 私より歳は2個上の物流担当だ。 オッサンと呼ばれた丹下さんとは仲良し。 よくこの部屋に顔を出しにくるから私とも話すようになった。 「あー…ななっぺ、今週末何してる?」 「へてる(寝てる)」 私は最小限の声量で答える。 サブレの咀嚼にいまだに手こずっていた。 「だろうと思った。デートしよ?」 「やめとく。」 「土曜日な。昼過ぎにしよ。また連絡するわ。」 はっ?と言ったつもりがサブレに阻止された。 デートか…めんどくさいけど、私ももうよい歳だしそんな事言ってられないよな。 こんな私を誘ってくれるだけありがたいことかもしれない。 楽しみではないけど、という認識で週末を迎えた。
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