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甲斐くんは車中で「路線変更だな。」と言い、動物園が併設された遊園地に連れて来てくれた。
私はこんなところに来るのは久しぶりで楽しくてはしゃぎまくった。
甲斐くんとは出会った当初から波長が合って、一緒にいても疲れない人だから、尚更楽しい。
休憩に、カフェテラスで一息つくことに。
ホットスナックと書いてある大きな看板をみて「あったかいお菓子って何?」と甲斐くんに聞くと「何だよそんなん知らねーわっ。」と言いながら笑われた。
「ななっぺめっちゃ楽しんでるじゃん。」
甲斐くんは女の子に手慣れているようで、ちゃんとエスコートしてくれるし会話をふってくれる。助かる。
「動物園も好きだし遊園地も大好き。」
「へー。意外だな。普段のあの薄暗い部屋でぼっち弁当食ってる子には見えないわ。」
「そりゃそうだよ。お昼といえどあれは仕事中じゃん。」
「へー。他の事務の子達とはつるまないの?営業と飲み会とかさ?皆んなよくやってるじゃん。」
「行かないね。メンバーが嫌な訳じゃないよ。ただやる事がいっぱいあるんだ。ウチ母親いないから。」
「え?そうなん?」
「うん。家族は父親と祖父、兄と弟。兄はもう家出てるけどね。」
「じゃあ家事は全部ななっぺ?」
「まぁね。だから忙しいんだ。弟の部活のお弁当も作らないとだしね。」
甲斐くんはコーラを飲む私をジッと見つめてくる。
「じゃーなんで今日はデートしてくれたの?貴重な休息時間を俺なんかで良かったわけ?」
「うん。私もいつまでもこのままじゃダメだよなぁと思って。折角誘ってくれたし?」
甲斐くんはまたジッと私を見てくる、意味ありげな顔をして。
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