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そういったホテルというと、ギラギラした反射する室内、回転するベッド、いかがわしい装飾。を想像していた。ヤクザ映画で見たやつ。
かと思いきや、こんな普通だとは。
私って本当に何にも知らないんだなと自分に呆れている。
あれから甲斐くんとはもう一回映画デートをした。
その時に私が全ての経験がない事をカミングアウトしたら、俺で良かったらと申し出てきたのだ。もちろん甲斐くんのその場のノリだったと思う。でも私は「お願いしてもいい?」と同じノリで答えた。
「じゃあとりあえずやってみるか?」と甲斐くんに言われ、現状を脱却出来るチャンスと決断し、今日は家族に男性と宿泊すると真実を告げてやってきた。
安心していただきたい。家族の夕飯、弟の明日のお弁当はキチンとこしらえてきた。
「ラブホって最高だね。カラオケにマッサージ機にゲーム。こんなのパラダイスじゃん。」
私のはしゃぎっぷりを甲斐くんは無視して、ソワソワと浴室へ行きお湯をためたりして動き回っている。落ち着きのない甲斐くんがらしくなくてなんだか可愛い。
テレビで急に映ったAVを見ていると、お風呂から出てきた甲斐くんが「お先ー。ななっぺは?入る?」と私を見ずに言いながらテレビを消した。
突然消されたテレビに少しムッとなりながらも「入る。」とお風呂に向かうと念入りに洗い、バスローブを着て出てくると甲斐くんがソファに座ってビールを飲んでいた。
アルコール摂取、これでもう運転出来ない。
甲斐くんは代行が嫌いなのだ。
だからここに泊まるという現実を見せつけられたようで、途端に緊張感が増す。
「甲斐くん…。」
ソファの前に立ち、どうしたらいいかわからない私は座る甲斐くんの反応を待つしかなかった。
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