藍白

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甲斐くんは何も言わずにジッと私を見つめてくるから、恥ずかしくなり彼の隣に並んで腰を下ろした。 「甲斐くん、どうしたの?顔が怖い。」 「うん…なんかさ、正直、後悔してる。ななっぺは…俺のことどう思ってる?」 ビール缶を目の前のローテーブルに置き、甲斐くんは体をこちらに向けた。 私もつられて、甲斐くんに体をむける。 「甲斐くんは…いい人だと思ってる。丹下さんとも仲良しだし、無理な配送の要求にも文句言わずに直ぐに対応してるの知ってるし…ただ…。」 「ただ?」 甲斐くんの表情を見たくて泳いだままだった視線を正面にいる彼に合わすと、心臓がドクンと跳ねた。 甲斐くんが…凄く…知らない男の人、の顔になっている。 少し怖くなる。 「ただ何?」 そう言いながら距離をつめてこられて、一気に抱きしめられた。 「俺はさ、最初軽い気持ちでデート誘ったんだ。予定なくなって暇になって。そしたらななっぺ本気出してくるんだもん、焦った。」 「弟が選んだワンピースにやられたんだ?」 「ハハッ、確かにな。でもさ、勢いでここまで来たけど…これでいいのかって。ななっぺの初めて俺なんかがもらっちゃっていーの?」 「うん、私こんな機会でもなければこの先一生経験しなそうだし?だから甲斐くんも軽い気持ちでいいからさ。付き合ってとか言わないし、もちろん後腐れないものと心得てます。」 「ハハッ、ななっぺ…あー…奈々って…呼ぶわ。奈々も、(ひびき)って呼んで。」 「いや、やめとく。付き合うわけじゃないし。」 「えっ?あはははっ。」 甲斐くんは私を引き離すと私の肩に手を置いて、頭を下げて大笑いした。 「奈々って…男みてーだよな?」 「あーごめんね…色気皆無で。」 あはははっと笑っていた甲斐くんは頭を上げると、私のおでこにコツンと自分のおでこをつける。 何だこれ。熱なんてないのに。 「色気…あるよ。俺かなりやられてる。」 「ほんと?良かった。あの、甲斐くん、多分私痛いって言っちゃうと思うけど、気にしないでね。」 「うん。俺もうブレーキ外れたから。こっちこそ止まらなくなったらごめん。」 そう言うと甲斐くんが唇を合わせてきた。 私は目を瞑る。 あぁ…キスしちゃったなぁ…。 割と冷静だな私。 唇が離れると、なんだか物足りなく感じた。 「嫌じゃない?」 甲斐くんが優しく聞いてくれて気持ちが柔らかくなる。 「うん。嬉しい。」 私の返答にフッと微笑んで甲斐くんは私の髪の毛を肩の後ろに逸らした。 あらわになった首を両手で掴まれると、さっきとまた違うキスをされた。 思わず甲斐くんの腕を掴む。
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