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そうして、約束の日。
「お待たせ」
ここ数日落ち着かなくて、その前日が特に顕著で、なかなか寝られず、約束の時間よりも早くに着いてしまい、そわそわしていると、穏やかな声が降ってきた。
顔を見上げ、目が合った途端、優しく微笑む。
どくん。
「ごめんね。久しぶりの誰かとのお出かけに手間取ってしまったんだ。僕の方が歳上なのにね」
「あっ、いえ! 僕も今来たところですから! 気になさならないでください」
「ふふ、そっか。じゃあ行こうか」
食い気味に頷くと、伊織の隣に並んで本屋へと赴く。
「これ、こないだ本屋大賞を受賞した本だよね。けど、こういうの読まないんだよね」
「僕もです。自分の趣味じゃないからっていうのが理由ですけど……。読まないと、なんだか読書家と言っていいのかとなったりしますが」
「いいんだよ。僕達がどんな本を読むのは、自由なんだ」
本屋を数軒梯子をしながらも、共通の話題をしているうちに、目的の本を見つけたという声が上がった。
その本を抱きしめ、嬉しそうに笑う伊織の顔に、ぶわっと顔が熱くなる。
「どうしたの、綴君」
きょとんとする伊織に、「いえいえっ! なんでもありませんっ!」と全力で首を横に振った。
「もしかして、暑いのかな。今日に限って暑いもんね。待ってて、これを会計してから休憩しに行こう」
「あ………ぇ……」
別にそこまで暑くないです。
そう言おうとしたのに、上手く言葉にならず、もたもたしている間に、彼は慌てて会計しに行ってしまった。
何だか申し訳ない。
気を紛らわそうと、携帯端末を弄っている時、「お待たせ」と息を弾ませた伊織がやってきた。
「はい」
両手で差し出してきた包みに、反射的に受け取ってしまった。
「……え? これって、さっき見つけたものなんじゃ……」
「こういう時って、あらかじめ買う方がいいんだろうけど、早く渡したくて、本を買うのを付き合って欲しいっていうのを建前に、プレゼントを選んでいたんだ」
おめでとう、とにっこりとした顔で言うのを、一色は思わずじっと見てしまいそうになったが、それよりも。
「えっ? え? おめでとう……って?」
「少し早いけど、数日後に誕生日だったよね?」
「そうですけど……覚えてくれていたのですか?」
「もちろん。司書をしている僕に、ここまで仲良くしてくれる生徒はいないからね。嬉しいよ」
「そ、そそれは……っ」
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