第014縫.全てを手に入れろ!

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第014縫.全てを手に入れろ!

 先程から、ニックの様子がちょっとおかしいんです。カクカクと歩いたかと思った次の瞬間、ニックの目が真っ白になってしまったんです! 「ニックさんっ!」 と声を掛けようとした、次の瞬間……何と、母の魂とワタシの魂とニックの身体を白い光の線で結んだ正三角形が浮かび上がったんです! 「朱璃、コレ……“通信魔方陣”よ! でも、こんな事が出来る人ってまさか……」 「だ、誰なんですか……?」  2人がまごまごしているとニックの口から何やら、まるでラジオの周波数を合わせる様な音が聞こえたんです。 ピーピーピー……ガガッ!  かと思ったらニックの眼、2つの視界の交差する点にぼんやりとホログラムが。そして、そこから聞こえたのは…… 【あーあーあー、テステステス。通信魔法陣、無事に設置かんりょおっ! こちらの声ぇ、聞こえてますか、オッケーィ?】  何と、ニックの口から男の人の声が聞こえて来て……いえ、正確にはそうでは無いですね。 【うんっ、呆気に取られてるって事は、ちゃんと聞こえてるな。聞いてるのは、愛しのキョウコかな? こっちは、ちょうどニックがキョウコと合流する頃を見計らい……タイミングを逆算して、ニックにこの魔法陣を組み込んだからなっ!】  正しくは脳内に声を直接響かせて……ってもうっ、ニックに魔法陣を組み込んで遥か彼方の次元から遠隔操作なんて、無茶苦茶な事しますね! 「やっぱり、あなただったのねっ! あれから私を地球に逃がした後も無事だったのね。心配してたのよ、あれから何の音沙汰も無かったから! 今でも私……愛してる!」 【オレもだよ、キョウコ。“究極の遠距離恋愛”にしちまってゴメンな……】 「ううん、いいの……あなた……」 ♡♡♡♡♡……  完全にワタシを放ったらかしで、2人だけの愛の時間が流れてますが……仕方無いですね♪  でも、余りにも2人がラブラブ過ぎて……媒体として間に挟まれてるニックがお湯が湧きそうなくらい全身真っ赤っかになってます。 ポンポンポン……    ポンポンポン……ぷしゅ~。  見て居てかわいそうです……ワタシはそっと助け船を出す事にしました。 「あのー、ワタシお母さんの娘の朱璃です。あまりにもお2人の世界がラブラブ過ぎて、聞いてるこっちもこっ恥ずかしいですよぉ」  ちょっと口を尖らせてみました。だけど……そう喋りながら、ワタシは耳たぶが真っ赤になってたんです。 【そうかそうか、アカリってんだぁ、オレ達の娘の名は……! 初めまして、オレがお前の父のシュージンだ、ヨロシクな……】 「ワタシも初めまして、お父さん」 【オレ達の元に生まれて来てくれて本当にありがとな、アカリ……って言っても、こうやって声は聞けるけどホログラム越しだからなぁ。会ってお前の顔を見られる日は来るかなぁ、アカリ……】  ワタシは、父シュージンの「生まれて来てくれてありがとう」の言葉にココロがジーンと震え……気付くと、涙がひと筋頬を伝って落ちてました。 【いやー、『危険』冒してまでニックを通して通信を図ってみて良かったよ……】  父の言った『危険』というセリフが気になりましたが、何気に今はこれ以上聞かない方が良さそうな気がします。 【それと、キョウコ母さんの事なら心配ねぇぞ……お前が思ってる以上に強いから、母さんはさ。それと……オレからもちょいとイイ話を教えてやるよ】  そしてこの次の言葉が、今回どうしても父がワタシに伝えたかった内容だったんです! 【今から言う事を落ち着いてよ~く聞けよ、アカリ。『大天使』と他の種族、または他の種族と『女神』……どちらの場合で生まれた子供でも男の子の場合は『大天使』に、女の子の場合は『女神』になるんだ……】 【だから、『大天使』は男のみ、『女神』は女しか存在しない。そしてアカリはな、『大天使』であるオレと母さんとの間に生まれた女の子なんだよ……】 え?え?どういう事なんですか……?  ワタシ、その言葉の真意を測りかねてしまいまして。そして次のひと言、父は声のトーンを落としてワタシに聞いたんです。 【アカリ……オレに会いたいか?】  次の瞬間、ワタシは頬を涙で濡らしたまま父に即答してました! 「……はい!」 【なら会える為のヒントをひとつ、教えておいてやるよ……『全てを手に入れろ!例え全てを失なう事になろうとも』ってひと言さ。オレにどうしても会いたいなら、決して忘れるなよ!】  だんだん、父の声にノイズが混ざって聞こえて来ます。 【それが何を意味するか……アカリなら……分かるな。おっと……もう妨害電波に……捕まっちまったのかよ。アカリ……父に会いに……『天界』へ来い……待ってるぞ……】  やがて、父の声はノイズに遮られて、殆ど聞こえなくなってしまいました。 ツーツーツー  それと共に、ニックの口からは雑音しか聞こえなくなり、それと同時に通信魔方陣もスーッと消えて無くなってしまったんです。 「ニックさん……大丈夫ですか?」  通信をし終わったニックは、縁側の軒下で仰向けのまま脚をピクピクさせてます。ニックは一体、無事なんでしょうか?
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