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第017縫.決意の旅立ちです!
女神になる覚悟を決め、父を追いかけて異世界へ突入する決意をしたワタシ。
これから先の異世界、地上界でワタシを待ち受ける「運命」とは一体……?
《母の想い》──────────
「ま、でも容易に想像出来るわね。朱璃には、お父さんに有る『3大神族で在る事を証明するモノ』が決定的に無いんですもの……それを集める旅になるでしょうね」
母は目を閉じました。そして、かつて『キュルミー大戦』でニックと冒険した日々を思い返したんです。
「前回の旅と違って、完全に裏方に回りましょ! 今回の私は黒子よ、陰から朱璃をバックアップするわ♪」
────────────────
《ワタシの想い》────────
「『天界』への道、それはお父さんの居場所に通じる道。ワタシ、必ずお父さんに会いに行きますからね!」
ワタシは目を閉じました。そして、先ほどニックを通して父と交わした会話を思い出して、まだ見ぬ父への恋慕の想いを募らせたんです。
────────────────
《ニックの想い》────────
【キョウコさま、奇しくも同じ“運命の道”をお姉ちゃんも歩む事になりそーだよー。キョウコさまー、お姉ちゃんを見守ってあげててねー】
ニックは目を閉じて……ぽへー。頭の中は花盛り、お菓子がいくつもフワフワと浮いてダンスを踊っています。
ニック、お花畑から戻っておいで~♪
────────────────
母、ワタシ、ニックがそれぞれ3者3様の想いを乗せ、それぞれがこれから「運命」に立ち向かう決意を新たにします。
「あっ、そうだわ……」
母には、言い忘れていた事があった様です。
「朱璃、あともう1つ……必ず伝えておかなくちゃって思ってた事があるの」
母の真っ直ぐな目がワタシの瞳を捉えます。
「先程私、過去を振り返った時に『テイムモンスターの“テイムちゃん”に気の力を送って、自分の代わりに魔法をかけて貰う』って言ったわよね?」
ツカツカとニックの方へ歩み寄ります。
「それが原因になってるのか、実は“テイムちゃん”ってテイムした宿主の気の力を栄養にして成長するのよ」
そして、母はワタシを指差して言いました。
「ニックをアナタに託した時、『アナタならニックの強さを最大まで引き出せそうな気がする』って言ったわよね?」
ワタシは、コクンと頷きます。
「“テイムちゃん”にはね、強さを最大まで引き出せたら姿が激変する種類も存在するの。先の大戦で、旅の末に辿り着いた『真実』のひとつなんだけど」
「フェアリーバードも……確かその種族のひとつのハズなのよね」
そして母は優しくニックの頭を撫でながら、言葉を続けます。
「ニックも私の霊力を栄養にして成長し、共に闘ってくれたわ。でも……結局最後までフェアリーバードのままだったの」
母は腕を組み、左腕の肘から上だけ出して手のひらを顎に当てます。うーん……
「どうしてニックの姿が変わらなかったのか、私なりに分析もしてみたわ。そして辿り着いた結論は、たった1つだけ。それでも姿が変わらない理由は、栄養にする気の力の『質』だと思うのよ」
母は組んだ腕を解き、片手はグー、もう片手はパーでポンと叩きながらニヤリと笑いました。
「人間の気『霊気』はダメだったけど、女神の気『神気』ならどうかしら?……コレが私が貴女にニックを託した最大の理由なの!」
どうやらニックをワタシの女神の気、『神気』に委ねるつもりの様です。母は、ニックの嘴をツンツンと突付きながら言葉を続けます。
「しかも、ニックはアナタの事を“お姉ちゃん”って最初から懐いてくれてるもの。私の時はこのコ、最初は振り向いてすらくれなかったのよ?」
ねっ?って顔をして、母はワタシとニックに微笑みかけます。
「最高のパートナーじゃない!」
母のその言葉に、ワタシもニッコリ微笑んでコクンと頷いたんです。
「これからも末永く宜しくお願いします、ニック……」
【お姉ちゃん、こちらも宜しくねー!】
ワタシは、ニックをキュッと優しくハグしてあげたのでした……
さぁ、休憩時間は終わりです。母はふぅとひと息つき、腕捲りして言いました。
「さぁニック、アナタ何処からこの世界に突入したのか、突入地点を教えて頂戴! そこに、恐らく“次元の歪み”があるハズだからね」
しゅるるるっ……ファサッ……!
母は戸棚から蛇腹に折り畳んで在る地図を持ち出して、それを空中で伸ばしながらテーブルに広げました。
流石はワタシの母、とてもカッコ良いです! 母の脳は、久しぶりに『冒険者モード』にシフトしたみたいですね……
母はニヤリ笑いながら、ニックにこう宣言したんです!
「さぁニック、私達で朱璃を異次元へ送り出してあげるわよ!」
みんな、決意の一歩を踏み出しました。いよいよ、住み慣れた我が家に別れを告げる時が来たみたいです。
……いえ、生きて又もう1度この家に戻るんです! ワタシは流れる涙を我慢しながら、母と何時までも家を見てたのでした……
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