第023縫.盗賊団、一網打尽!

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第023縫.盗賊団、一網打尽!

 まず、盗賊団『メフィスト』の下っ端2人がこちらに迫って来ます。この2人は、人間の世界から地上界へと流れ着いた転移者なんでしょうか? 「たかが小娘だぁ! 2人がかりで動けなくして押し倒しちまえっ!」  ワタシはこちらに迫り来る2人の内の1人の腕を絡め取り、絡め取った腕を腕グイ♡で捕まえて微笑みながら自分の懐に引き寄せます。 「さぁ、応用連携技、行きます! 腕グイ♡で捕まえてからの……」  そして、タイミングを見計らって。ちょうど後から追いかけて来たもう1人とピッタリ重なるタイミングで…… 「……壁ドン♡!」  ワタシは腕グイ♡で捕まえた盗賊のどてっ腹に手を当てて、超至近距離から壁ドン♡をお見舞いしたんです!  どうやら壁ドン♡で放った気の波動は、憐れな2人組のうち1人目を貫通して2人目にも当たった様です。  そして、吹っ飛ばされた先で2人とも踞って嘔吐物を吐き出して倒れてしまいました。 ぷ〜♪ ぴぷ〜♪  ちなみにニックは空中で浮かびながら両方の翼の先を頭の後ろに重ね、口笛を吹いてます。完全に傍観者に徹してくれてるんです。  これは手抜きでは有りません。自分は関知せず、もし万が一、大の大人5人が女の子1人に手も足も出ない様な事態になれば……  こんな所で二度と盗賊家業なんて出来ないです、恥ずかしくて。ニックはそれを狙ってるんです。信じてくれてるんでしょう、ワタシの実力を。日本で繰り返した、あの特訓の日々の成果を。 …………!!!  今の連携技を見て、残りの3人は脳内データを上方修正します。 「今の2人、肋骨が折れてしまったかも」  ワタシのそのひと言を聞いた途端、残り3人の内まず2人が腰を低くして身構えます。 「アイツら相手が女だからって、子供だからってナメてかかり過ぎだぜ!」 「新入りだからしょうが無ぇな! 生き死にのステージに自ら上がって来れる度胸、まるで分かっちゃいねぇのさ!」  明らかに、最初の2人とは違います。今度の2人は、軽装鎧を身に包んだリザードマンです。でも、そんな悠長に構えてて良いんですかねぇ? 「さぁ、今度は顎クイ♡の応用技です!」  そう言って、並んで突っ込んで来る2人に両手で待ち構えます。  そして、右の掌底突きで1人目の喉を、左の掌底突きで2人目の右肩の付け根を。それぞれの軽装鎧の繋ぎ目を正確に避けて当てて…… 「……顎クイ♡!」  カウンターで両方の掌底突きを振り抜きました! しかも同時に身を沈めながら2歩目の踏み込み幅を広く取った事で、2人とも急に目の前からワタシの姿が消えた錯覚を引き起こします。  それと同時に、歩幅を広く取った事でカウンターした相手に瞬歩で追い付き追撃を可能にします! 吹っ飛ばされた2人は追撃でその場で空中をクルクルと一回転し、泡を噴いて突っ伏してしまいました。  残った1人、親分は喚き散らしました。 「何だぁ、お前は? どっから湧いて出やがったんだ?」  いえ、空から降って来たと思うんですけど…… 「お前、まさかこの町娘を取り返しに来たのかぁ? ……渡せねぇなぁ! 何故ならコイツらは高い金ヅルになる “どれ……” 」 メキョ……  次の瞬間、周りの景色がスローになって親分の顔面にワタシのブーツがメリ込みました。 「それから先のセリフ、絶対に言わせません……!」  キッと親分を睨んで、ワタシは言い放ちます。怒りの所為でしょうか、ワタシの目……絶対、三角に吊り上がってますよぉ……手鏡見るの、コワイwww 「しかもオレの自慢のペットだったガーゴイル、黒いヒビに吸い込まれたまま帰って来ねえしよ……」  あのガーゴイルを日本に送った張本人は、アナタだったんですか……! アナタのお陰で、ワタシも母も……言質は取れました、遠慮無く…… メキョ…… 「いってぇ~!この小娘、オレの顔面に2度もケリ入れやがってぇ! おっ父にもおっ母にも、()たれた事無いのに……」  親分は見た目がゴツい、腕っぷしの強そうなオーガなのですが……よく見ると、親分の顔面にキュイぐるみのブーツの“残念な”靴裏がくっきりと赤く残ってます。  笑ってはダメ、な所ですよぉ……  ニコッと怖い笑みを浮かべてブーツをメリ込ませたワタシに、親分は一番言ってはイケナイ“ひと言”を思わず発してしまったんです! 「ば……バケモンが……っ!」  次の瞬間、どこからともなくカチン!という音が…… 「はぁ? 女の子に向かって……“バケモン”ですってぇ!!?」  背後がゴゴゴ……と怒りの炎で燃え盛ります。どうやらそのひと言が、完全にワタシの『逆鱗』に触れてしまったんです! 「ええいっ、こうなりゃヤケだ! コレでも喰らえっ!」  親分はそう言って、手に持つ巨鎚にモノを言わせて上から振り下ろしスタンプ攻撃をカマします! 「顎クイ♡からの……!」  ワタシは身構え溜めを作ったまま巨鎚の軌道をギリギリで避け、カウンター気味に親分の顎に掌底突きの顎クイ♡をクリーンヒットさせました!  この場面での顎クイ♡は、ただ親分の動きを止める為だけのモノではありません。何と、渾身の顎クイ♡で親分の身体を地面から引っこ抜く為のモノだったんです! ガキッ……! 「……爆走ホールド!!」  そして、少し親分を宙に浮かせた状態で素早く親分の腕を取り…… 「お空の彼方まで飛んでいけーっ! バックハグ♡!!!」  ワタシは腕をキメながら、弧を描く様にクルッと回って遠心力を乗せた一本背負いをして大空にブン投げました!  すると巨体がぶっ飛んで脳天が地面に突き刺さり、頭から血を流して気を失ってしまいました。 「盗賊団『メフィスト』、一網打尽です!」 【いぇーいっ!】  ワタシは、ニックと手と翼をタッチし喜び合いました。  バックハグ♡は単独技では無く、ボクシングのデンプシーロールみたいに連携に組み込んで初めて活きる技である事を学習したワタシなのでした。  でも、それだけではまだ完成度50%のままなんですけどね♪  ……それを、巨木の洞で縮こまっている町娘の皆さんがポカーンとしながら見ています。 「さぁお姉さん達、逃げるなら今ですよ!」  ワタシは、町娘の皆さんを全員森から逃がしたのでした。 《 第1章 Fin 》
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