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第025縫.5大陸の場所を学ぶ
リーダーのお姉さんが、大きな地図を木の切り株に広げて指差しながら説明します。
「まずはこの異世界、ココでは『地上界』って呼ばれてますわ。見てお分かりの通り、この地上界は5つの大陸に分かれてますの」
ワタシもニックも、もの珍しそうに指差す地図を見下ろして。地上界の言葉で表記されてるので、ニックに理解を手伝って貰います。
「地図の真ん中に右斜めに連なって2つ、そして左上と右下、左下にそれぞれ1つずつ。これで合計5つですわ」
ふんふん、とワタシとニックは地図を見て指を差しながら確認します。1、2、3、4、5……確かに5つですね。
「まず、真ん中にある2つからですわ。右上にあるのが“アルカディア大陸”と呼ばれてますの。この大陸には、『転移者』『転生者』の人達を保護する目的で造られた、みんなで身を寄せあって暮らしている里がありますわ」
そうですね、この里に行けば“キュルミー”の事や“女神”の事が分かるかも知れません。
流石にお姉さんもワタシが『転移者』である事を知ってるので説明もゆっくり、ワタシが理解出来るまで待っててくれます。
「もし旅の道標がまだ見つからないのでしたら、まずこの大陸を目指してみるのも手かも知れないですわね」
そして本当にこの里に『転移者』が居るのでしたら、ひょっとするとお母さんの足跡もたぶんそこに在るかも……
せっかくこの地上界に来たんです。お母さんの足跡が分かるのなら、お母さんがこの世界に来て、何を為したのか……辿ってみたいです。
「そして、左下にある方の大陸は“トンポイ大陸”って呼ばれてますの。ここはとにかく海岸線が多いから、バカンス目的で観光に来る人が多いですのよ。私達もこの大陸に呼ばれる事が一番多いですわ」
うわぁ……行ってみたいですね、観光地。冒険に疲れた時とか、ココに立ち寄ればリフレッシュ出来そうです。
「ちなみに“アルカディア大陸”と“トンポイ大陸”の間には、巨大な大橋がありますの。両方の大陸から自由に行き来出来る様になっており、通行料は確か取られなかったと思いますわ」
この2つの大陸は、互いに繋がってるみたいですね。だけど、他の3つの大陸はちょっと距離が離れてます。どうやって行けば良いのでしょう……?
「あとは、地図の端に点在している3大陸を説明しますね。まず、左下の大陸は“スメルクト大陸”って言います。現在、私達が居る大陸もココですわ」
へぇ、今私達が立ってるのはここら辺なんですね。分かりやすい様に、現在地の矢印が欲しい所です。
「ココはとにかく伝承が多くて、分からない部分が多いんですわ。その中でも昔からよく聞かされていたのが……
────────────────
・『天を突き破る巨山の遥かなる頂に、“神獣たちの幻郷”なる場所が存在する』
・『近付いた者の五感を全て奪い尽くす“魔の沼”が存在する』
・『決して眼に映らない“透明なドラゴン”が、人を乗せて飛び回ってる』
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……この辺りが結構有名な伝承ですわ。誰もそんなものを実際に見た事も聞いた事も無いし、本当に存在するかどうかもマユツバ物ですよね」
それを聞いて、ニックは喉の奥まで言葉が出掛かります。何処も前に1度、地上界で母と廻った事がある地ばかりなのでしょうか?
ふふっ、その顔は行った事有るんですね。そう云う所、母にそっくりです。それでも何とかゴクンと呑み込んで、素知らぬふりをします。
「そして、右下にあるのが“魔法大陸マガンティ”って言いますの。普通の人では見る事も叶わない“幻の大陸”なんて呼ばれてますわ」
お姉さんはニコッと笑いました。ワタシが何気にチラと隣を見ると、困った顔したニックが。この大陸に関しては、ニックも知らないんですね。
「それが何故かは……自分の目で確かめて見た方が面白いかも知れないですね。でも『見る事も叶わない』ってあるけど、でも確かにそこに大陸は存在してますのよ」
そして、お姉さんは地図のある部分を指差して言葉を続けます。
「だって、地図にちゃんと表記されてますわよね? それとこの地図、よぉく見てご覧なさって? 何故か、この大陸だけちょー薄く“影”が描いてあるでしょ? それが、お姉さんからのヒントですわ」
そこまで言われると……行きたくてうずうすしちゃうじゃないですか。しかも“魔法大陸”ってあるから、まさか魔法が関係してるんでしょうか……?
「そして、最後に残った左上の大陸が“デルジア大陸”って言いますわ」
さぁ、一番最後に残った5つ目の大陸の説明……なんですが……
「悪いのですが……この大陸は“暗黒大陸”、全てが未開の地で何も分かって無いんですの。色んな国が『調査団』を派遣してこの大陸に送り込んでいるんだけど、誰も帰って来ないんですわ……」
スゴい“曰く付き”の大陸ですね! 武器防具、戦闘スキル、経験値、全てが充実して来る一番最後に巡るべき大陸です! 旅の最終目的地になりそうな予感です……
って、ゲームのやり過ぎ……ですか?
そして、リーダーのお姉さんはニッコリと微笑んで最後にこう付け足しました。
「私達『かぐら座』は、魔法大陸マガンティ、デルジア大陸を除くほぼ全ての国と地域をくまなく渡り歩いていますわ。ひょっとすると、また何処か別の地域で再会出来るかも知れませんね……」
ワタシは地上界の事について教えてもらい、世界地図までプレゼントして貰いました。
「“弾き子”の皆さん、この辺りはまだモンスターがいるかも知れないのでワタシと最寄りの町まで行きませんか?」
「あっ、すみません。旅のお方、宜しくお願いします。あちらの方角ですわ……」
そしてワタシとニック、“弾き子”の皆さんの計6人で町に向かい歩き始めたのでした。
【う・ん・ち・く♡】─────
《スメルクト大陸の伝承》
・『天を突き破る巨山の遥かなる頂に、“神獣たちの幻郷”なる場所が存在する』
➡後に、第5章にてアカリとニックが実際に訪れる事になります。
・『近付いた者の五感を全て奪い尽くす“魔の沼”が存在する』
➡母キョウコとニックが今作もうひとりのヒロイン、フィリルの幼い時に初めて出会った地です。
・『決して眼に映らない“透明なドラゴン”が、人を乗せて飛び回ってる』
➡母キョウコが初めてのテイムちゃん、キュイを失う事になった因縁の相手です。キュイの意志はきぐるみとして母キョウコに、そして娘アカリへ受け継がれてます。
所詮、伝承なんてそんなもんです(笑)
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