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第026縫.怪し過ぎる謎の一団
ワタシとニックはかぐら座のお姉さん達と行動を共にして、今居る場所から小高い丘を迂回する様に移動を開始します。
ぱたぱた、ぱたた……
ん、どうやらふよふよ空飛ぶニックが……移動した直後に小高い丘に姿を現した、大樹の洞を覗う一団を見つけた様です。
ちょんちょん? こくん。
ニックとのアイコンタクト、完璧です♪
かぐら座のお姉さん達の前で、ワタシはスッと腕を横に上げて。お姉さん達を静止させて、手のひらでくいっくいっと呼び寄せます。
お姉さん達も只ならぬ空気を感じ取り、音を立てずにそろりそろりと近寄ります。ワタシは無口で、ちょんちょんと例の一団を指差します。
……クセがスゴい一団、ロックオン♡
ちょっと面白そうなので、みんなで茂みに隠れ覗いてみる事にしましょう♪
「よしっ、行動を開始するゾッ!」
『おぉーっ!!!』×2
ズ……ズザザザ……ッ!
「突風が来ても仁王立ちで動じない、最高にクールな漢達!」
「突風が来てバタバタとたなびくレインボーマフラー!」
「繰り出せ鼻息! なびけマフラー!」
3人が格好良くポージングを決めて、最後にビシッとキメ台詞で!
「3人揃って、『ターキーズ』!」
シャキィィィンッ……!!!
どこからともなく“謎の効果音”が流れた瞬間、タイミングを合わせたかの様に緑色の爆薬が背後で炸裂します!
ドカァァァンッッッ!!!
……豪快でクールな登場シーンです!
しかも、コンビネーションもバッチリです。日頃から、相当練習しているんでしょうか。その証拠に全員同じレインボーマフラーを首に巻いています。
マフラーの端、一番バタバタする部分には団員の証、黒下地に緑のウサギのステッカーを縫い付けています。しかも“手縫い”で……でも、残念ながらバタバタたなびくせいで全く見えませんが。
まずは、今日のお仕事の依頼を全員で確認するみたいですね。
遠く、茂みから覗いてるからナニ言ってるか分かりませんって? 心配ご無用です、この人達は全てに全力。声が馬鹿デカくて分かりやすいです♪
「よしっ、今日の仕事は“ビンゴブック”に載ってるブロンズリスト集団、盗賊団『メフィスト』の殲滅だぁ!」
3人組のレッドが、号令を掛けます。
「ブルー、グリーン、みんな散らばるぞ! レディ・セ……」
ブルーが右手をバッと横に広げて、慌てて静止して冷静に辺りを伺います。
「ちょ、ちょっと待てレッド! 何か様子がヘンだぞ……?」
グリーンが両手を腰に回して、のほほーんとすまし顔で答えます。
「コレは明らかに、誰かから襲撃を受けたって感じだよねー♪ ホラ、あそこに倒れているのは保護対象になっている“異世界民”じゃないのかい?」
グリーン、向こうで倒れてる下っ端盗賊2人を指差してそう言います。
「あっ、こっちには“ビンゴブック”のブロンズクラス、闇討ち兄弟で有名な『辻斬りチーゼルズ』が泡吹いて寝ているぜ!」
ブルーは、別の場所で2匹のリザードマンを見付けます。
「おいコイツ、ブロンズリストの『剛牙鎚のディッツ』じゃないか! 確かに、盗賊団『メフィスト』が全員ノされてる……」
最後に、レッドが大樹の根元で頭から血を流してノビてる『メフィスト』の親分を発見します。
「つい最近もオレ達の同業者を返り討ちしたばかりの“札付きのワル”共、一体何があったんだ……???」
3人とも、今だに状況が呑み込めません。
激戦、劣勢を覚悟して、それでも負けは許されないと思い特にコンビネーションに重点を置いて特訓を積み重ねた上でこの戦場に来てみたら……闘う前にターゲット、既に全滅してたんですから。
一方、彼らと茂みを隔てた向こうでは……ニックが地面の枝を踏まない様に、空中でぐるぐると器用に回転してます。
ヒーヒー、ヒーヒー!
ニック、笑い転げてたんですね。上下左右、自在に。まるで宇宙遊泳みたいです。よほど、この『ターキーズ』がツボにハマったんでしょうか?
数刻後……また少し間を置いて、彼らの様子をもう一度覗いてみます。
あ、レッドが夕日に向かって何か叫んでます!
「おとーさん、頑張ってるぞー♡!」
どうやらレッド、妻子持ちの熱血漢みたいですね。語尾に♡を付けているって事は、子供さんはたぶん娘さんなんでしょうか?
その光景をウンウンと温かく身守るブルーは、レッドみたいな愛に溢れた家庭を夢見る婚活男子では無いかと思われます。
逆にその光景を冷めた目で見てるグリーン。幼少の頃から両親の愛情を知らず育ったのか、物事の事象をいつも斜め下からしか見れなさそうですね。
ただ今『ターキーズ』の一員として、レッドの元でヒトのココロを勉強中……って所でしょうか?
しばらくすると全員で輪を囲み、律儀に反省会をし始めたんです。
当然議題に上がるのは、来た時にはもうすでに全滅していた盗賊団『メフィスト』の事かと思っていたら……何と、最後のキメ台詞後の演出の時の緑の爆薬の量だったんです!
「マジでありゃあ、死ぬぞ……」
「すいませんっ、爆薬の配分量を間違えましたっ!」
裏方班が、レッドにガミガミ怒られている様です。どうしてなんでしょうか?
「いいか、『ターキーズ』はフリーのハンターチームなんだ。言わば、雇い主から要請があった時だけ裏活動部隊として契約しているんだよ」
どうやら、裏方班との息がまだ合っていないみたいですね。
「そして、『ターキーズ』はオレ達“現場班”とお前達“裏方班”が揃ってこそのチームなんだ。互いに息の合った連携が上手く取れねぇと、他のヤツらに仕事をみぃ~んな持ってかれちまうんだ、肝に銘じておけ!」
そして、これから言う事だけは決して忘れるな、と拳を振り上げて力説してます。
「それに、この爆破シーンは言わば雇い主への『存在感アピール』なんだ! オレ達みたいなフリーのハンターチームはな、他にごまんといるんだ」
レッド、アツいです! アツ過ぎです!
「だからアピールに手を抜いていたら、仕事がキッチリ出来るだけじゃあ他のヤツらに出し抜かれちまうんだ!」
「だからフリーのハンターチームって、何処もかしこも変なヤツらばっかなんだねー♪」
プププ……ククク……
辺りから、失笑が漏れます。
「だから裏方班、他の仕事も大切だが爆破シーンだけは絶対に手を抜くなよ! “生き馬の目を抜かれる”なんて、ザラなんだからなっ!」
何やら、色々と檄が飛んでいる様です。コンビネーション抜群なこのクセがスゴい一団、一体何者なんでしょうか……?
【もーちょっと、見たーいー!】
でも、何時までも此処に逗まる訳に行かなくて。名残惜しいけど、茂みから離れます。それでも飛んで戻れるからとニックだけ齧り付いて見ていて。
そんなニックが目撃したのは……ひと通り檄を飛ばし終え、用を足しに裏側に廻ったレッドの姿。
ジョジョ……ジョロロロロロ……
「ちぇっ、面白い見せもん披露してやれば尻尾を出すかと思ったのによぉ。思ったより、身持ち堅いんじゃ無えか?」
しっしっしっ……ふぅ。
「バレてないと思ってんのかねぇ? もうちょい泳がしてみるか、あの嬢ちゃん達」
……!??
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