第028縫.初代女神アマテラス

1/1

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ

第028縫.初代女神アマテラス

 どうすればキュルムの町の人々、家から顔を出してくれるのでしょう?  どうにかして町の人々と交流を持ちたい、と今までジッ……と考え事をしていたリーダーのお姉さん。  すると妙案が浮かんだのか、いきなりカラカラと笑い出したではありませんか! 「はははは……そうだ、イイ事を思い付いたですわ。この中央の広場で、座りながら楽器でジャラジャラ音を鳴らしちゃいましょう!」  お姉さんのいきなりの提案に、ワタシもニックもビックリです! ニックに至っては両眼が大きく嘴パッカリ、翼をバサッと広げたままカーン!と固まっています。 「えっ……ちょっと待って! 何をなさる気なんですか……?」 「ねぇ旅のお方、この地には『アマテラスのお話』って伝承話があるんですの……このお話、聞いてみたい?」 「……?」  ワタシ、ムムムと首を傾げます。すると4人の“弾き子”の皆さん、ワタシの方を向いて順番にひとつの昔話を語ってくれたんです。 「これは私達が祖父の世代から伝え聞いてた……昔むかしの大昔、まだ全ての種族がひとつの世界で仲良く暮らしてた時のお話ですわ」 「【アマテラス】っていう、着た女神さまが居たそうなんですの。生きとし生ける者は全て、アマテラス様を“太陽の女神さま”と崇め祀ったそうですわ」 「でも、アマテラス様は弟君の【スサノヲ】って乱暴者の破壊神さまに虐められ、大層怖がってたそうですの」 「あまりに乱暴を働くので、とうとう居ても立っても居られなくなったアマテラス様は洞穴に隠れ“天岩戸”と言う大きな岩で蓋をして……」 『と呼ばれる、もうひとつの新しい世界を創ってしまわれたそうですわ』×4  えっ……“天界”ですって? まさか地上界に来て、早々に最初の町でその名前を聞くなんて……! それとも、5大陸を股に駆ける渡りの座楽団『かぐら座』だからこそ知ってるんでしょうか?  すると、今度は弾き子の3人が続きを語ります。それは始まりの、リーダーのお姉さんが弾く静かな曲調に乗せて。 「“太陽の女神さま”が隠れてしまったせいでいつまでも世界は真っ暗闇なままになってしまい、地上界の人々は困り果ててしまったそうなんです」 「スサノヲ様はアマテラス様が居ないのをいい事に、漆黒の暗闇を使ってこの世界に君臨なさろうとしたんです」 「そこで、地上界で仲良く暮らしていた7つの種族をそれぞれ治める長老達が一堂に集い、協力し合ったそうなんですわ……」  そう言い、語りを終えた弾き子さんからひとりずつ……リーダーのお姉さんの曲調の波に自ら加わり、溶け込んで行きます。  静かな、それでいて滑らかな音……そのうち、弾く音が2つになって絡まり合います。そして、3つの音で曲調がいきなり変わります。  最後に、4つの音が高め合う……! それは不完全をみんなで補い合って「完全」にして行く様な、まるで楽器を使った重厚な『起承転結』です。  しばらく聞いているうちにワタシも何だか楽しくなり、気付いたら……自然と笑っていました。  ニックも、目を大きくしたまま楽器の音に合わせておっとっと♪おっとっと♪とお尻フリフリ踊ってます。それを見た弾き子4人にも笑みが溢れます。  みんなで、笑顔の「大合唱」です!  すると、弾いてる楽器の音色に吊られたのか……気が付いたら、町の人達がみんな家から外に出て来て居たんです。  そして、中央の広場に集まって来たではありませんか……でも、何でみんな“きぐるみ“着てるの? 見ようによっては、かなり異様な光景です。  弾き子のお姉さん達は、楽器を静かに弾きながら話してくれました。 「先ほどのお話の続きなのですが……天岩戸の奥に隠れてしまった“太陽の女神さま”を、どうにか外の世界へとお戻ししようと」 「それぞれの種族から選抜された7人の弾き子達が、天岩戸の前で体力の続く限り楽器を演奏し始めたんですわ」 「正に命を賭した、魂の演奏だったらしいですわ。すると、その曲に合わせてアマテラス様も天岩戸を開けて外に出て下さったんですの」 「アマテラス様の“太陽の様な”ご威光は真っ暗闇だった世界を七色の光で満たし、スサノヲ様は遂に漆黒の暗闇ごとと呼ばれる別の世界へと封印されてしまった、って話なんです」  お姉さんの話を聞いて、感じました。この『アマテラスのお話』において、“7”って数字はとても重要な意味合いを持っているのではないでしょうか? 特に『7人の長老達』とか、どこかで聞いた事がある様な……  ふーんとワタシが聞いていると、ふとお姉さんがこう聞いて来ました。 「ね……このお話、今の状況に似てません? 旅のお方、アマテラス様は何につられて天岩戸を開けて外に出たんだと思います?」  んーとね……ワタシは、お姉さんからの問いに首を傾げながら答えます。 「岩の隙間から漏れ聞こえる、“楽器の音色”……ですか?」 「いえ、『アマテラス』様を揺り動かしたのは“楽器の音色”などではなく、実は……」  と言いながら、お姉さんはワタシのほっぺをツンツンと優しく突付いたんです。 「実は、楽器の音色を聞いた“人々の笑い声”だったんですわ!」 「つまり町の人達を中央の広場に呼んだのは私達が弾いた楽器の音色じゃなくて、旅のお方が笑った笑い声を聞いてみんな出て来てくれたんですの!」  なるほど、そういう事ですか!  すると、お話に出て来た『7人の長老達』が現在の『7世界の王』の起源になっているのでしょうか……たぶん?
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加