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第005縫.ダンスとシンクロ率
テレビの前で思わずワタシの目が釘付けになってしまった、番組でこの日の夜に紹介してた昔話は『天の羽衣』の、とあるシーン。
白龍という若い漁師が隠した羽衣を返す代わりに、天女さんがその羽衣を着て神秘的な舞いを披露して……舞いながら月へと帰るシーンです。
注目したのは、天女さんの舞い。天女さんの身体から何か細い帯みたいなのがウニョウニョと出て、ヒラヒラと天女さんと一緒に舞ってる様に……ワタシには見えたんです!
「ねぇねぇ、ひょっとしたら……踊る様な一連の動作からシャンパンゴールドの帯を放出させれば、コントロール出来ちゃったりするのではないでしょうか?」
興奮冷めやらないワタシ、居ても立っても居られなくて。急いで外に飛び出し、試しに公園で試してみました。あの天女さんの舞いを頭の中で思い出しながら……見様見真似で即席の舞いをしてみます。
恥ずかしい話になりますが、体育が得意なワタシなんですが特に苦手な分野が有ります。そのひとつが……創作ダンスなんです。
どうしても、ひとつひとつの動作の終わりがカクッカクッとなってしまうんです。別に、合気道とか武道をしている時には何ら問題無いのに……
でも即席の舞いをしながらあの帯を放出してみると、滑らかに帯が伸びるでは有りませんか!
シュルシュルシュル……
しかも、放出される帯の勢いがそのまま舞いの推進力になって。動作の終わりがカクッカクッとならず、滑らかに踊れるんです!
「うんっ、いい感じいい感じっ! 来週の創作ダンスの披露会の時にコッソリ使ってみましょう!」
今度こそ『カクカクダンス』だの、『ブレイクダンス女子』だの、散々なアダ名を付けてくれた男の子達の鼻を明かしてやるんですから! ワタシの鼻息、フンフンと荒いです。
後日、創作ダンスの披露会で無事に溜飲を下げる事が出来たワタシは……さっそくその次の日から新しいトレーニングとして活動の拠点、家の裏庭で色んな動作を試してみる事にしたんです。
どの動作が、どれだけこの帯をコントロールし易いのか……相性の良さやシンクロ率を、ひとつひとつ順番に探って行くんです。採用基準は、シンクロ率8割越えです!
「ふぅ、疲れましたぁ」
ヘトヘトになったワタシは、トレーニングを中断して空を見上げます。冷たい空気が身を引き締めるのと同時に、ある光景に目を、ココロを一瞬で奪われてしまいました。
それは巻雲の薄い層のお陰で見られた、このまばゆいばかりの大気の妙。雲に対し太陽が直角の位置にある場合、太陽を反射してもうひとつ小さな太陽が生じる視覚現象……幻日です。
雲の中に、鮮やかな虹が見えます。巻雲は氷の結晶を含んでおり、これが入ってくる太陽光を反射してまるでふたつの太陽がある様に見せるんです。
だから幻日は太陽の両側の雲の中に現われる、はっきりした楔形の虹色の光に見えるんですよね。
幻日は、太陽が地平線に近づいた時によく起こると言われてます。空に、まるで実際の太陽が現れた様に明るくて……大きくて。
「まぁ、何て綺麗なんでしょう」
これはきっと頑張ってるワタシへの、神様からのプレゼントに違いない……そう思う事にしたんです。しばらくはトレーニングとして、ヘトヘトになるまでひたすら踊る日々が続きそうだからです。
そして、それから更に数ヶ月後……現在に至ります。
「シンクロ率8割越えって、結構あるものなんですね! その中で相性の良さも考慮して、実際に使えそうな技もいくつか出来ましたし……」
あとは、それに相応しい技の名前を付けたいですよね。そうね、出来れば女の子っぽいカワイイ名前がいいですね……名乗って、思わずポッてなっちゃう様な技の名前……
ワタシだって15才の年頃の女子高生ですから、カワイイもの……大好きですよ♪
そう言えば、スマホのSNSをググった時にこんな言葉を見つけたんです。
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今ドキ女子が胸キュンする
オトコのモテ仕草
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ちょうど、採用した動作とワタシとの相性の良さも、たまたまなんでしょうか? “コレ”系統に寄り集まってるのが、何と無く多い様な気がして。
じゃあ……これからカワイイ名前をパクるのも、面白いかもですね♡
うふふ……とワタシが頭の中でいろいろと考えていると、ふとあの時と同じ冷たい感覚を感じました! 何と、暗闇の穴からゴブリンの群れが8匹湧いて出て来たんです!
「あっ、ゴブリンが!ヤバイですっ!」
タッタッタッ……
急いで距離を取って、ワタシはゴブリン達が気配に気付かない所まで下がります。
ゴブリン達と、初めての闘いはどう繰り広げて行きましょう? ワタシが新しく編み出した闘い方、技の集大成をお披露目する時です……!
【う・ん・ち・く♡】─────
《似て非なる物語》
シャンパンゴールドの神気の帯をコントロールする為のイメージトレーニングとして、最も有効だったのが日本の昔話『天の羽衣』でした。
しかし日本の昔話には『天の羽衣』のお話ともうひとつ、似た様な話で『天女の羽衣』というお話もあります。
でも、そもそも漁師の名前が違いますし、『天の羽衣』では羽衣を隠された天女さんは月に帰れなくなって漁師と結婚するらしいです。
ちなみに、舞いも披露しません。
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