和菓子屋さん

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和菓子屋さん

 うららかな陽差しの中、和菓子屋までの道を歩いた。この辺りのどこかに最近鶯が住み着いたようで、あの独特のよく通る鳴き声を聞かせている。前を向き、歩いていく。和菓子屋は何人か客が居て、待つ間ウインドウの向こうに陳列されたみたらし団子や粒あんを乗せた草団子、定番のいちご大福などをひとみは丁寧に見ていった。お目当ては柏餅だけれど、見ているだけで少し楽しくなるような眺めだった。  順番が来て、ひとみは柏餅をふたつ頼んだ。二つはカロリーオーバーだけれど、今日は祖父に供える気持ちで、二つにしたのだった。  愛想のよいお店のおばさんが、いつもありがとう、と言ってくれた。ひとみはどうも、とぎこちなく会釈を返して店を後にした。こんな自分のことを憶えてくれている人がいるんだな、とちょっとありがたいような、恥ずかしいような気持ちだった。
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