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そうして貴女は中学生になりました。
放課後、教室の窓から校庭を見下ろしていましたら、制服でボールを蹴る貴女の姿が目に留まりました。茶色く染めた髪を派手な髪ゴムでポニーテールに纏め、ぴょこぴょこと兎のように男子の後を追いかけています。好きな男子をコロコロと変えていましたから、またしても、風で飛ぶほど軽い恋心を能天気な胸に浮かべているのでしょう。
そんな恋の一人目はバスケ部の先輩でしたっけ。貴女が彼に手紙で告白し、回し読みされてからかわれて私に泣きついてきたときも、「困ったな」という程度でさして驚きはしませんでした。尤も、中学生活で同じ行為を別の男子に五回も繰り返したのはさすがに想定外でしたが……。貴女があんなに惚れっぽく男癖が悪かったとは。
さて、貴女の向こう見ずな性格が災いし、またしても恋に落ちたのは三年生の秋。相手は、中学からこの町に転入してきた中村君という同級生。よからぬ噂がある子です。
中村君には二つ上の兄がおり眉目秀麗で成績優秀な生徒として町の有名人でしたが、教師や保護者は知らないささやかな秘密がありました。羊の皮を着た狼の、本当の顔が。
都会的な雰囲気を持った彼は、町中の女の子に人気がありました。気安く写真や動画撮影に応じ、時にSNSに投稿するのも素敵だそうで。初めは流行の音楽に乗せて踊ったりするだけですが、そのうち趣旨を変えて女の子単体で撮らせて肌も露出させ、諸々で得た収入は彼が持っていくと聞きます。彼自身は上手く立ち回って女の子だけがインターネット上の晒し者になるわけですが、それでも彼に幻滅できず嵌まってしまった子達は、仲間となって悪事に加担しているのだとか。
弟の中村君も手伝っていることは、子供達の社会では周知の事実でした。大半は巻き込まれぬよう警戒していましたが、ごく一部の、貴女のような女の子達だけは、彼の『ちょっと悪い感じ』に憧れて、どうにか仲間に入れてもらおうと競い合っておりました。我が身の危険より、甘い刺激を求めて。
ですから中村君だけでなく彼のお兄さんにまでアピールし、仲間の反感を買って呼び出されたのだって、貴女が蒔いた種でしょう。それなのに、また、私にお願いするなんて。
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