よすがたるもの

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 私は泣きじゃくる貴女をおんぶしてから、貴女が呪文を何度も間違えたり、なかなか地蔵を蹴ろうとせず杏里に小突かれたりする様を見守っていました。  貴女の力が強すぎたせいか、それとも元から不安定だったのか、蹴った拍子に地蔵は倒れて頭がもげてしまい、杏里は「ぎゃあ! 首を切られて殺されるう!」とわざとらしい悲鳴をあげました。  良い動画が撮れたと喜ぶ杏里達とは対照的に、貴女は夜闇でもわかるほど、赤ん坊のように弱々しい顔をして私に縋っていました。  「呪い殺されちゃう。助けて……」  まったく、こんなことくらいで祟られるなんて馬鹿げています。しかし、そのとき私はひどく疲れきっており、貴女を適当にあしらうことしかできませんでした。  杏里と対峙した晩のことは、今でも時折思い返します。あのとき彼女は「どうしてあんな女の身代わりになったのか」と尋ねたのです。杏里のように、高台から町を見下ろす人間には一生わからないことでしょう。どんな面倒事を負わされても、いないものとして無視されるよりはずっとましだということを。
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