よすがたるもの

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 間もなくして貴女は学校を休みがちになり、不登校になり、そのまま卒業を迎えました。部屋に引きこもった貴女は何かに見られている気がすると、やはり地蔵に憑かれているのだとやたらに怖がり、どれだけ言い聞かせても安心しないので、近所の神社で御守りを購入してあげました。あれは私の少ないお小遣いから捻出したのですよ。我ながら献身的すぎたと思います。  しかし、それまででした。三度と言わず何度も貴女の頼みを聞いてきましたが、今度こそ、私と貴女の関係は途切れたのです。  高校に進学した貴女の悪い噂は、私の耳にも届いていました。とんでもなく露出した服装の貴女が私の目の前を通りがかったときは、あまりの変わりように驚いて、心臓が止まるかと思いましたよ。あれが地蔵の呪いだとしたら笑ってしまいます。  覚えていますか。  あのとき、貴女が私を無視して通り過ぎた日ですよ……。     * * *
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