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脈動
田上 誠は報告書のためオカルト雑誌ゾーン編集部のある渋谷区宇田川の雑居ビルを訪れていた。
「協力してくれませんかねぇ?」
「うちの雑誌読めばわかるだろ?」
「いえ、そうではなくてですね……」
応接室に高級ブランデーを箱で持ち込み交渉する誠。
「地下巨大貯水槽に邪神眷属が巣食っていた。あんたらが駆除に行ったが善意の第三者が加勢して全部燃やした。それだけではないかな」
「狼男……」
「わざわざ波風たてないのが世渡りのコツだよ、主任くん。通りすがりの正義の味方とでも書いとけ。第一、生き残りから聴取すればいいだろう?」
「なにも言わないのです」
「ふん?」
「自分たちが未熟だった。それしか言わないので」
「いいじゃないか。次は上手くやるだろ」
大山 覚はワンカップの封をきる。
「当事者の恭輔さんは?」
「あぁ……事後処理に出かけたよ」
「何の後始末ですか?」
「そうだな、少し昔話をしようか……」
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