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かつて素体と呼ばれた姿に変異した枷門 仁は星晨の都合で黄衣の王に成れず思案していた。掌には黄色の印がある。
「空にプレアデス輝く時かざすべし……か」
北半球は現在は夏である。プレアデスは太陽の輝きにうちけされて見えない。
「もう一つの手を試すか…………炎炁招來」
虚空より紅い指輪が顕れる。人の姿に戻ると左薬指に填める。次いで黄色の印をベルトのバックルに重ねる。黄色の印から黒い荊状の触手が無数に伸び腰を締め付けた。
「おい! さっきの蝗みたいなのはあんたなのか?」
枷門 仁が振り返るとそこに佐渡教授と防衛駐在官の大山 覚が立っていた。
「もう少し離れていてくれないか、燃えちまうぞ」
枷門 仁は指輪を填めた左手を天にかざす。
「生ける炎よ、地獄の業火の主よ、火炎の指輪を証とし我に助力を願う。フングルイィムグルナウゥ・クトゥグア、フォマルハウト・ンガァ・グァ・ナフルタグン、イァ・クトゥグアクトゥグアクトゥグア!!」
指輪からドス黒い炎が噴きだし枷門 仁を包み込む。周囲の地面が瓦礫がドロドロと熔け崩れマグマのようになる。
「イグナイィ! イグナイィ! エエェ・ヤ・ヤ・ヤ、ヤハァハアァ・アァ・アァ・アァ・ングフアァングフ・アアァ・ヤ・ヤヤアァ!!」
天にかざされた左手が黒い炎を払い真紅の異形が現れる。
「真っ赤な蝗男かい」
「紅衣の王だ」
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