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トラックの荷台から兵士と学生たちがぞろぞろと降りてくる。
「無事でしたか。大山くん、佐渡教授」
山口大使が小さな女の子を抱っこして降りてきた。
「العم جين」
「お兄さんだ」
「えっ? 分かるのですか? 先ほどは話せないし理解できないと……」
「ん? ちょっとね」
人差し指で眉間を指す。
山口大使からアーイシャを抱きとり地面に降ろす。
「اين والدتك」
「すまん、まだみつからないんだ。違う場所に連れていかれたらしい」
「この子のお母さんがどうしたのです?」
山口大使がアーイシャの頭を撫で仁に訊く。
「あんたらと同じだ、誘拐されたんだ。目的は初めは慰みもの、いまはおそらく儀式の生贄……」
「邪神クトゥルー」
「いや、違う。佐渡さん、あんた邪王ザッハークと言ったよな。ならクトゥルーのまえに邪神龍アジ・ダカーハの復活が先だろう」
アーイシャが仁のライダースジャケットの裾をギュっと引っ張る。
「مساعدة أمي ، عمي」
「あんた、その子との約束を守るためだけに戦車持った軍隊と戦ったのか!?」
「子供の泣いた顔を見たくないんだ」
しゃがんで仁はアーイシャのくしゃくしゃの泣き顔を見て頭を撫でる。
「このおじちゃんたちと安全な所に行って待っててくれないか?」
「أنا أكره ذلك ، فلنساعد أمي معًا!」
困った、と仁は周囲を見渡しため息をついた。
「この子の面倒は私と大山さんでみますから一緒に助けに行きましょう」
「えっ? 俺もかよ」
「なら私も同行します」
佐渡教授の提案に大山が唖然としデヴィットが参加を表明した。
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