黒き太陽(アバドン)

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           ◈ 「首長(カリフ)、私は……私だけは……助けていただけるのでしょうか」  紫色の僧衣を纏った首長(カリフ)の背後に隠れていた小田嶋康平がおずおずと声をかける。動揺しているためアラビア語ではなく日本語でである。気づきあわててアラビア語で問い直す。 「الأمر متروك لإرادة الرب. ليس لدي سلطة.」 「そっ、そんな……」  自己保身のみしか頭にない男は見苦しくも首長(カリフ)の足元に膝まずき僧衣を掴みすがりつく。 「あの女でどうか私の命だけは……」 「لديك استخدامات」 「ありがとうございます」  小田嶋康平は首長(カリフ)を見上げ驚きに目を大きく開く。そこには人ではない蛇の顔をもち鱗に被われた身体の爬虫類人(レプタリアン)の司祭がいた。
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