指輪の誓い

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「そうだ陸斗。これ、貰って」  大河は急にポケットから何かを取り出した。  ——指輪だ。  同じデザインの、ゴールドとシルバーの色違いの指輪。 「わざと金と銀にした。男同士で同じ指輪は恥ずかしいだろ? 陸斗、どっちがいい?」  陸斗と大河の指のサイズは同じだ。以前アクセサリー屋で測った時に「同じじゃん」と大河と笑い合った事がある。 「いきなり指輪かよ……」  今どき告白する時に指輪を用意する奴なんていないだろ。 「えっ? ごめん! 引いた? 引くか。引くよな……」 「違う。俺に告白して振られるかもしれないのによく買うよな……」 「なんだそっちかよ。びっくりしたな……。別にいいだろ、俺は陸斗を見える物でも縛っておきたいんだよ!」 「俺、指輪は好きじゃない」 「嘘つけ。いつもジャラジャラ付けてるだろ」  ジャラジャラは言い過ぎだ。プライベートの時に気に入ったものを一つ二つだけだ。 「俺シルバーがいい」  陸斗の持っているアクセサリーはシルバーばかりだ。ゴールドでは目立ってしまうから。 「貰ってくれるんだ」  大河はものすごく嬉しそうな顔をした。 「仕事の時は着けないからな」  陸斗と大河は同じ会社の同期で、会社ではほぼ他人のふりをしている。そして陸斗は会社では『付き合ってる人はいない』ということになっている。それなのに指輪なんてできる訳がない。 「いいぜ。陸斗の好きにしろ。お前が受け取ってくれるだけで俺は最高に幸せだから」  大河はシルバーの指輪を手に取り、陸斗の左手を引き寄せる。 「右っ! 右がいいっ!」  左手薬指なんて耐えられない。あからさま過ぎて恥ずかしい。 「右ね。わかったよ」  大河は陸斗の右手の薬指にシルバーの指輪をはめる。そして大河はゴールドの指輪を左手の薬指に自らはめた。  そして陸斗を愛おしそうに見つめて言う。  この指輪に誓う。俺はずっとお前のそばにいるよ。変わらずお前を愛し続ける。お前が必要としてくれてる限り、お前に嫌だと拒絶されるまでは、俺は絶対に離れないから——。
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