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 しばらくの間、花弥は姿を見せなかった。  花弥のために何が出来るか、僕はひたすらに考えた。  僕に心があるとするなら。人に恋をすることが許されるならば。  やはり、僕は花弥に笑ってほしいのだと思う。  そして、わかってほしいんだ。君は君のままでいいんだって。ありのままでも、想いを伝えることはできるんだって。  僕だって同じだよ。自分の意志を君に示すことすらできないと、ずっと諦めてきた。  だけど、それは間違いだった。    だって、そうじゃないか。僕らは一度だって言葉を交わすことはできなかったけれど、どこかで通じ合っていただろう?  言葉がなければ、色でもいい。光でもいい。香りでもいい。幻でもいい。僕のすべてを捧げてもいい。  慕情よ咲け。いまひとたび、彼女の微笑みを取り戻すんだ。
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