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勤務中だというのに、口には煙草を咥えて紫煙を燻らせるのは、この際咎めずに置いて。
一応服装も、ダークグレーのツーピースに焦げ茶のワイシャツ、取り敢えずで濃紺のネクタイを緩めに結んではいるため、一応はセーフと見なしてやった。
「おぅ。あれかよ。……まぁ、見るからに生意気そうなくそ餓鬼だな。フィー坊が気に入るのも理解る」
「……呼びますか?」
「否。先に用事を済ませておく。……部長室は向こうだな?」
そう応え、案内など不必要と言わんばかりに歩き出したディニテの姿が、廊下の奥へと消えたところで、イースタン親子が駆け寄ってきた。
「あの課長補佐、あの“昏きもの”。一体、誰なんですか?」
「また新しい人材なのかよぃ?」
「あぁ。違うよ。あの方は、ちょっと用事でね。ケーニヒ部長と話をしにきたんだ」
事を穏便に済ませようと話をかい摘まんで説明していると、ラキの声が降る。
「何だよ。俺ぁまたてっきり、新手の侵入者かと思ったぜ」
ラキには即座に生意気な反応をしなかった事に半ば感謝しながら、シェイカーが苦笑する。
「はは……。違う違う。ちゃんとした、俺の客人だからね」
まぁ相手がディニテで非常に厄介なので、不用意に元四大霊鬼“蒼”だと紹介したくもないシェイカーは、取り敢えず無難な方向で返した。
"紺碧の覇者"と謳われる程の“昏きもの”を相手取り、イグレシオン署の大事な署員に喧嘩を売らせる訳にはいかない。
「噂に違わず生意気な餓鬼だな。益々以て、手解きしようがある」
そう考えていたのだが、意外と早く話をつけてきたのか、いつの間にか、背後にディニテが立っていた。
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