第三章・ー真なる実力ー

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 案内された二人は、対峙している。  いつものように、ギャラリーとしてついてきたのはテイラー、ロイナス、そしてどこから嗅ぎ付けたのか、何故かにこにこ顔のエルファリスと、例によって審判役を任されたシェイカーであった。  対峙しても尚、手合わせしたくないのか不服そうな顔でいるオフィーリアとは裏腹に、ディニテはあくまでも楽しげな表情だ。  それでも、一度言い出した事なのだからと、仕方なさそうに息を吐いたオフィーリアが、真剣な表情へと戻ると“アラストル”を構えて、ディニテの動きを待つ。  ……が、それを見て盛大にため息を吐いたディニテが、物凄く嫌そうに顔を歪めると、一気に殺気を纏いながら言ったのだ。 「おいおい、フィー坊。よもやこの私を前にして、そのような茶番が通用すると思うのか? ()()()()気がないのならば、阿保な真似は即刻止めろ」  言われたオフィーリアの雰囲気が一気に変わる。  ぴくりと片眉を上げ、瞬間、ディニテを睨みつけたのだが、大した文句も言わずに構えの型を変えた。  重心を更に低く、“アラストル”の刀身を自らの身体で隠すように持ち、そうしてから、半歩、右足を前に出す。  それを目の当たりにしたラキ、テイラー、シェイカーが息を呑んだ。  何も言わずとも、三人にはその構えが意味するところを、瞬時に理解出来たからだ。  重心を低くしたのは、剣撃に重みと威力を加えるため。  そして“アラストル”の刀身を身体で隠す意味はずばり、攻撃の型を相手に読ませ難くするためだ。  相手から刀身を見えなくすれば、少なくとも初手がどこから、どう放たれるのか予想がつき難くなる。  その上で半歩前に出たのは、踏み出すスピードを、更に増すための布石ーー。
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