第三章・ー真なる実力ー

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 今までオフィーリアは、どんなに強そうな“昏きもの”と対峙した時でも、何なら先日シャークと手合わせした時ですら、そんな型を見せなかった。  否。ただの一度も、見た事がない。  ()()は確実に、相手を殺す手法だ。  一分の隙もなく。ただ確実に相手を殺す。そんな明確な意思を持たない限り、絶対にしない。  恐らくオフィーリア自身、長らく封印していたのだと推測出来る。  それは即ち、かつて歩んできた道で得た、自身の命を長らえさせる唯一の方法だ。  だからそんな必要がなくなった今の今まで、封印していた。  ……それなのに、と。シェイカーはいまだ不遜な態度を隠さないディニテに視線を寄越す。  あんな、たったの一言だけで、“呼び醒ます”のかとーー。 「それで良い。……では、かかってきなさい」  言われるまでもなく、といった感じでオフィーリアが跳ぶ。  身動き一つ取らないディニテに対して、喉元を斬り裂く“アラストル”の一閃が黒雷と共に襲いかかる。  同時に真空の刃も放たれるが、残念ながら直撃する直前に、乾いた空気が破裂するような音が辺りに響いたかと思うと、発生した風がディニテの前髪を僅かに揺らしただけだった。  攻撃が簡単に当たるとは思っていなかったのか、遥か手前で着地したオフィーリアが、間髪を容れずに再び跳ぶ。  今度は一瞬でディニテの眼前に着地したオフィーリアが、息も吐かせぬスピードで斬りかかる。  素人目には一撃に見える攻撃も、実は三、否、四、五撃と放たれている。  だが、それら全て、いつの間にか携えているディニテの剣で受け流されていた。
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