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ラキがそんな風に、決意を新たにしている間にも、二人の激戦は続いている。
神速とも呼べるスピードでの攻撃はだが、一度たりともディニテには届かない。
……が、僅かずつにだが確実に、捉える事が可能になってきてもいた。
ディニテは手強い。
だが、隙が完全にない訳ではないと、相手を突き崩す一手を放つタイミングを図っている最中、ディニテから掌底突きが繰り出された。
咄嗟に避けようとしたが間に合わず、“アラストル”を弾かれてしまう。
成す術もなく“アラストル”が宙を舞うが、地面へと落ちきる寸前、器用にも柄を持ち直したオフィーリアが、そのままの勢いで獲物とする頚を掻き斬ろうと一閃する。
それをディニテが、紙一重の差で避け切った。
……筈だった。
だがしかし、揺れる前髪から、はらりと一筋、髪の毛が落ちたのだ。
ーー束の間、場の空気が凍ったかのようにして、皆が驚きの表情を隠さず固まった。
次いで、頬から一筋、冷や汗を流したディニテが一言。
「……あ、あのぅ。フィー坊? な、何かフィー坊、全盛期よか、更に強くなってない……?」
「……あ?」
恐る恐る、といった感じで質問するディニテに対して、あくまでもオフィーリアは冷ややかに応える。
そんなオフィーリアに、多少引きつった笑みを浮かべたディニテが続けた。
「えーと……。今日はもう、止めよう。これ以上は駄目だな」
「あぁん? 自分が本気で殺れ言うたんやろが。最期の時まで責任持てや」
容赦なく返すオフィーリアの目は、完全に据わっちゃっていた。
それ即ち、ガチ切れしている。という事に他ならない。
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