第一章・ー"紺碧の覇者"ー

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 いつもならばぼさぼさのままの蒼い髪は、少しばかりウェーブがかかった状態でまとめられ、前髪をいくらか遊ばせたカジュアルなもので。  更にスーツも、見るからに上質なのりの利いた、生地も明らかに高そうだと分かる、ブラックのスリーピースを着用している。  ネクタイは濃紺で、シャツは薄いピンクを選んでいるようだ。  そんなディニテが、目の前を行き交う人々に、興味もなさげに視線を送っている。  何か用事でもあったのかと、出勤途中であるのを忘れて思わず走り寄る。 「ディニテ殿……!」  名前を呼ばれ、さすがに気付いたようで“昏きもの”……ディニテが、シェイカーへと視線を集中させる。 「……ん? おぉ。誰かと思えば、腹黒ドクターかよ。私も大概、運が良いな」  にやりと笑う姿は様になっていて、それに少し見惚れそうになったシェイカーだったが、すぐに持ち直すと質問する。 「どうしてこのようなところに?」 「あぁ。少しばかり野暮用だ。貴様、出勤するのだろうが。丁度良いから私をそこまで案内しろ」 「え? イグレシオン署陰契課に御用なのですか?」 「で、なければ案内しろとは言わん」  よりによって陰契課に用件があるとは思ってもいなかった。  てっきりいつもの気紛れかと判断していたのだが、今回は身嗜みを整えて赴いている点から、どうやら本当に目的地であるようだ。  しかも、口調も普段皆の前で使うようなふざけたものでなく、初めから素を出しているところからして、何やら真面目な用件かと、隣立って歩き出しながらちらちらとディニテを見る。
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