第一章・ー"紺碧の覇者"ー

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「……何だよ。視線が煩い」  ディニテが、心底鬱陶しそうに話しかけてくる。 「いや。このようなところに用件なんて、珍しいなぁと思いまして」  咄嗟に疑問点を挙げてみると、途端に面倒そうな表情を浮かべたディニテが、とてつもなく盛大なため息を吐いた。  街には朝独特の活気が溢れ、行き交う人々の表情も明るく、買い物をしているだけの主婦ですら幸せそうにしているのにーー。  それにも関わらず、ディニテはまるで、地の底を這うような低い声音を発する。 「貴様のとこの上司……、部長だったかに少し、苦言を呈しにな」 「ケーニヒ部長に苦言、ですか」 「曾孫がこないだきただろう」 「あ、はい」 「()()から大体の話を聞いた。……で、タイミング良くジョシュアからも相談を受けてな。私が言う用件とはつまり、フィー坊の事なのだが」  それでさすがのシェイカーも大体察した。  頷くと、ディニテが満足したように瞳を細めながら続ける。 「曾孫のアホが死ぬ程煩くてウザくてな。私としても本意ではないから、今日こさせてもらった」 「一体何のお話ですか?」 「曾孫はフィー坊に執着しているからな。()()なコンプレックスは、死んでも治らんな、多分」  つい最近目の当たりしたシャークとオフィーリアの手合わせは、それこそまさに殺し合いであった。  両者共に冷酷で、且つ非情で在ったと感じたのは、シェイカーの記憶にも新しい。 「コンプレックス、ですか」 「あのな。()()はコンプレックスの塊が生きてる。貴様もフィー坊からそう教わっただろうが」  確かにシェイカーも、オフィーリアからそういった話を聞いた事はあるのだが、傍目には完璧そうに見えるシャークが、実はコンプレックスの塊とはと、俄には信じ難いとも思っている。
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